サブポルフィリンはポルフィリンの環縮小類縁体であり、14π芳香族性、お椀型構造、高い発光性といった興味深い電子的・光化学的物性を有している。2006年に当研究室で合成法が確立されて以来、精力的な研究によってその合成収率は約20%程度にまで改善され、特に2012年にメゾ位無置換型サブポルフィリンが開発されたことから、メゾ位の反応性を利用した様々な周辺部修飾反応や多量化への展開がおこなわれている。 このような著しい進展の一方で、サブポルフィリンを用いた機能性材料の開発はほとんど為されていない。 申請者の二年目の研究では主に色素増感太陽電池への応用を指向したサブポルフィリン類縁体の合成をおこなった。 上記のメゾ無置換型サブポルフィリンの合成法を利用して、カップリング反応によりカルボキシフェニル基、カルボキシフェニルエチニル基、およびカルボキシル基をシアノアリル酸へと変換した一連のサブポルフィリン類を合成し、高変換効率を実現している。現在残りの2つのフェニル基をアミノフェニル基へと変換した化合物の合成をおこなっている。 また、硫黄原子で架橋されたサブポルフィリン二量体の合成にも成功し、二つのサブポルフィリン間での励起子相互作用に関する研究もおこなっている。オルト位に置換基を有するニトロフェニルサブポルフィリンでは、珍しいねじれ電荷移動現象を見出した。これらの研究を通じてサブポルフィリンの合成・単離・精製・結晶化に至るあらゆる技術を習得し、現在研究を纏めている。
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