光波を用いた生体の断層イメージング技術であるOCTは,無侵襲性と数十μmの高い空間分解能が特徴である.一方, 脳外科の分野では,MRIなどにより腫瘍部分は確認できるが,後遺症を減らすために,脳表面の機能マッピング情報を元に切除部位を最小にする必要である.そのため,皮質上に電気刺激を与え,その反応で機能マッピング情報を得て,切除部位の判断を行う覚醒手術が行われている.短時間でより正確な機能マップを得るかが重要になる.従来の機能マッピングの方法では,空間分解能が十分でなく,光学的内因性信号(OIS)を用いた方法が期待されている.これは,組織が活動すると,代謝変化により,組織の吸収・散乱特性が変化することを用いる.実際,反射率変化は小さく,表面は凹凸があり,心拍や呼吸で動きを伴う.高いニーズがありながら,関連のOCTの研究開発は国内では,一般には知られていない.変位する組織に対して,より高感度に内因性信号を高い空間分解能で測定するかが課題となる.これに対して,本研究で得られた結果を以下に述べる. 1)単一露光型 WF OCTの感度の検討では,感度を低下させる原因となる直流画像成分を低減する測定方法を提案し,約6dBの感度向上を確認し,実際にポリスチレンスポンジを用いて画像測定を行い,測定方法の有効性を確認した. 2)組織の動きに対応する WF OCTでは,測定領域4.0x4.3mm2においてガラスのジグを組織表面にコンタクトさせて表面の動きを抑制する方法とOCTとを融合を提案し,ジグを豚の筋組織に用いても,組織表面の反射画像,位相画像,コンタクト付近の断層画像が測定できることを示した.
|