今年度はSr3Fe2O7の酸素量変化が電子伝導特性および結晶構造に与える影響を評価した。これは固体酸化物形燃料電池の空気極がさらされる雰囲気や運転条件で、空気極材料の物性がどのように変化するかを検討するうえで必要不可欠な知見である。また材料の電気化学特性向上を目標に、異種元素添加の影響も評価した。熱重量測定、クーロン滴定、導電率測定は実際の燃料電池が動作する600~800℃で測定を行った。また任意の温度・酸素粉圧における結晶構造をIn-situ XRD測定により評価した。酸素欠陥種が生成することによる結晶格子の変形は他の不定批正材料でも報告されているが、この現象をデバイス設計に反映しないと、深刻な劣化・破壊がもたらされることが懸念される。そのため、任意の条件における結晶構造を明らかにすることは高信頼性の燃料電池システムを構築するうえで必要不可欠な知見である。 Sr3Fe2O7の主要な電子伝導キャリアはホールであることが確認できた。酸素分圧変化による電子伝導性の変化は欠陥化学的に予想される挙動と一致した。また、Sr3Fe2O7はある程度の電子伝導性および可動酸素欠陥種を有していることから、酸化物イオン-電子の混合導電性を示すことが示唆された。混合伝導性は、高性能は空気極材料のに必要とされる特性の一つである。 酸素量変化による結晶格子の変化は、通常の不定批正酸化物で報告されているものとは異なる挙動を示すことが明らかになった。これは非常に興味深い実験結果であり、Sr3Fe2O7の層状構造に由来するものであることが予想される。今後さらに変形機構を検討する必要があると考えている。 また昨年度まで得られていた実験結果をまとめ、査読有論文1報、国際学会発表2件、国内学会発表2件の成果を上げた。
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