近年、透明フッ化物セラミックスは、酸化物よりも優れたレーザー媒質であると認識されつつあり、注目が集まっている。これまで、酸化物の多結晶透明セラミックスに研究は多く行われているが、フッ化物の多結晶透明セラミックスに関する研究は皆無である。多結晶セラミックスでは、微細構造が透光性に与える影響が極めて大きく、高い透光性を実現するためには、微細構造制御による透光性の発現メカニズムの解明が必須となる。 平成26年度は、CaF2粉末を用いて、放電プラズマ焼結(SPS)法のフッ化物セラミックス焼結プロセスへの適用性を明らかにした。SPSプロセスパラメータ(昇温速度、焼結温度、保持時間、印加圧力)が、焼結体の緻密化過程と微細構造変化に与える影響について調べた。得られた試料のX線回折図形は、CaF2に指数付けることができた。印加圧力および焼結温度が高い程、CaF2焼結体の透光性は向上した。一方、昇温速度が低い程、CaF2焼結体の透光性は向上した。焼結温度750℃および800℃の時、波長2600nmでの透過率は、いずれも85%に達した。 このように、SPSを用いて透明フッ化物セラミックスの合成に成功し、SPS法のフッ化物セラミックス焼結プロセスへの適用性を実証した。さらに優れた透光性を示すセラミックスを合成するためには、微細構造と透光性の関係を明らかにする必要があり、微細構造と透光性の関係を丹念に調べながら、焼結条件の適正化することで、優れた透光性を示すフッ化物セラミックスを合成できる。
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