研究課題/領域番号 |
13F03072
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
田辺 信介 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授
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研究分担者 |
NGUYEN Minh Tue 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 外国人特別研究員
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キーワード | CALUX / 内分泌撹乱物質 / 難燃剤 / ダイオキシン類縁化合物 / E-waste / 毒性同定評価 / ベトナム |
研究概要 |
本年度は、ベトナムの各種樹脂廃棄物や電子・電気機器廃棄物(e-waste)のリサイクル処理現場において処理作業等の実態調査を行うとともに、大気やダスト、土壌等の環境試料および作業従事者や周辺住民の血清試料を採取した。また、廃プラスチック処理地域(Nhu Quynh)、E-waste処理地域(BuiDau)、: 非リサイクル処理対照地域(DuongQuang)から採取したダスト試料を対象に、in vitroレポーター遺伝子アッセイCALUXを用いて内分泌撹乱活性に関するスクリーニング調査を行い、関連物質の存在と相関について検証した。すなわち、アリルハイドロカーポン(AhR)、エストロゲン(ERα)、アンドロゲン(IAR)、甲状腺ホルモン(TRβ)およびペルオキシゾーム増殖剤応答性受容体(PPARδ2)を介した遺伝子転写活性を測定するCALUXバッテリーを用いて、ダスト試料抽出物中の各種内分泌撹乱活性を評価した。1その結果、多くのダスト試料からAhRおよびERαのアゴニスト活性、ARのアンタゴニスト活性が検出され1た。AhRのアゴニスト活性とARのアンタゴニスト活性は、調査地域のなかでもE-waste処理地域のBuiDauiで明らかに高い傾向を示した(最高値はそれぞれ26 ng TEQ/g, 130 ㎍ flutamide-EQ/g)。一方、ERのアゴニスト活性については、地城による顕著な差異は認められなかった(最高値1300 ㎍ E2-EQ/g)。また、ガスクロマトグラフー質量分析装置および液体クロマトグラフータンデム型質量分析装置を用いて、抗アンドロゲン作用およびエストロゲン作用が報告されている臭素系難燃剤のPBDEsと有機リン系難燃剤を測定したところ、両難燃剤ともBui Dauのダスト試料において最も高い濃度が検出された(それぞれ総濃度で1600 ng/gおよび5500 ng/g)。しかしながら、CALUXで得られた活性パターンと難燃剤成分の濃度は一致せず、これら物質は主要な活性寄与物質ではないと考えられた。さらに二次元GC飛行時間型質量分析計を用いた試料中ダイオキシン様活性物質の網羅検索・同定に関する基礎的検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に予定していた主な研究実施項目は、1)ベトナムのリサイクル処理現場における調査の実施と試料採取、2)CALUXバッテリーを用いた試料中内分泌撹乱活性のスクリーニング、3)検出された活性に関連する化学物質の測定、4)二次元GC飛行時間型質量分析計等を用いた活性物質の検索・同定手法の開発、などである。上記の研究成果はこれらを満たすものであり、国内外の学会・シンポジウム等で一部成果を発表した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の調査、研究成果に基づき、ベトナムのリサイクル処理現場における追加的な調査と試料採取を実施する。また、内分泌撹乱・ダイオキシン様活性に寄与する既知物質群や同定された活性物質の測定について、ガスクロマトグラフー質量分析装置や液体クロマトグラフータンデム型質量分析装置を用いた高感度・ハイスループットな分析手法を適用し、バイオアッセイによる各遺伝子転写活性化能の測定結果と統合して、各種環境媒体やヒト血清試料等に含まれる化学物質の活性寄与プロファイルを明らかにする。
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