研究概要 |
代表者, 分担者らのフィールドワーク, 国内外の研究協力者, および国内外の研究機関からの標本貸し出しにより, 54属200種超のツノカメムシ科昆虫の試料を収集した. これは属レベルで80%以上をカバーしている. また, 蔡氏をロンドンの自然史博物館に派遣し, 保管されている模式標本の検討を行った. これらの試料に基づく分類学的研究により, 東洋区の本科から, 13のシノニム, 9種の属の所属変更, および10未記載種が見出された. 特に問題の多い3属(Acanthosoma, Anaxandra, Sastragala)の分類学的, 系統学的再検討論文の執筆を現在進めている. また, これらのサンプルのうち, 特に母親による卵保護行動の進化で重要となるツノカメムシ亜科を中心に, 3亜科12属35種をDNA解析用に99%エタノール中に保存しており, これらの分子系統解析も進めている. ミトコンドリア2遺伝子(12S, 16S rDNA)と核の2遺伝子(18S rDNA, Histone 3)の解析をほぼ終え, 予備解析では良好な結果を得ている. より浅い分岐関係を解析するために, 進化速度の速いミトコンドリアCOI遺伝子の解析が現在進行中で, これが終わり次第, 系統解析と繁殖行動の進化解析を行い, 論文の執筆に移る. さらに, 鳴門教育大学, 工藤慎一准教授と共同で, 繁殖行動の解析も進めた. 卵保護行動を行う新たな種が見出された他, 母親が直接卵保護を行わない種では, 雌腹部第5-8節に存在するPendergrast器官と呼ばれる器官から, 何らかの分泌物が出され, それを卵に塗布するような行動が観察された. これらの行動観察の結果は, 分子系統樹構築後その進化パターンの解析を行う.
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