研究概要 |
本研究では, 中国南部で猛威をふるっているクロフトン雑草がどのように生態系へと侵入し, 生息地を拡大しているかについて, 植物の栄養獲得様式, 特に窒素とリンの獲得様式に着目して研究を行う。現在我々の持つ仮説では, クロフトン雑草が高い硝酸イオン吸収能を持ち, 高窒素濃度の葉を展開し, 土壌へと供給することによって, より土壌が硝酸イオン生成能を持つようになる, というpositive feedbackの結果, 侵入後の生態系をよりクロフトン雑草の生育が容易であるものへと改変していると考えている。 これまで異なるクロフトン雑草侵入程度(つまり異なる植物多様性)をもつプロットにおいて採取してきた, 300あまりの土壌, 植物試料について、1 窒素, 炭素, リン濃度, そのストイキオメトリーを測定し, 窒素炭素リン循環の概略をつかむこと、2 窒素炭素安定同位体比を測定し, 植物の水利用効率, 窒素獲得様式の多様性について群落レベルの議論を行うこと、3 植物体内中の硝酸イオン濃度および窒素酸素安定同位体比を測定すること、を目的としている。1年目は2について研究を行い、群落の多様性の増大に伴う土壌の窒素同位体比の変化が観測された。これについてはさらなる精査が必要であり、1、3の結果によってなぜ植物多様性と土壌の窒素安定同位体比に相関が見られるのかについて検討が可能となる予定である。現在1についてはリン濃度よりもより的確な指標となり得るリン獲得に関連した酵素の活性測定を開始しており、当初予定していた計画よりも一歩詳細なストイキオメトリックな議論が可能となると期待している。
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