研究実績の概要 |
白紋羽菌、Rosellinia necatrixは日本の果樹に重大な被害を齎している植物糸状菌病である。本研究では、白紋羽菌に感染し、その病原力を衰退させる新規ウイルス(Rosellinia necatrix megabirnavirus 1, RnMBV1)のウイルス学的性状とヴァイロコントロール(生物防除)因子としての潜在力を調べ、マイコウイルス学、ヴァイロコントールへの貢献を目指し、以下の成果を記述する。1-1ウイルス粒子トランスフェクション法を利用し、菌細胞質不和合性の複数の白紋羽病菌への感染性ならびに病原力低下効果を確認した。 1-2 RnMBV1を目が異なるクリ胴枯病菌への感染性ならびに病原力低下効果を確認した。RnMBV1のヴァイロコントロール因子としての可能性を広げる成果である(JAMAL氏が来日する以前に前倒しで実施し、論文掲載にこぎ着けた)。 1-3ヴァイロコントロール因子の長期安定保存が不可欠であるが、精製RnMBV1粒子は -80Cで1年以上安定に感染性を保持していた。 2-1 RnMBV1ゲノムセグメントはそれぞれ極めて長い(約1.6 kb)の非翻訳領域(ミニシストロンを複数含む)と2つのORFをもつ。5’側ORFがどのような機構で完全長mRNAから翻訳されるかを、リポーター系を確立した。 2-2 5’非翻訳領域がIRES(内部リボゾームエントリー部位)活性を持つことを確認し、さらにそのコア活性領域をORF1領域近傍の500塩基の絞り込みに成功した。 2-3感染性RnMBV1核酸の合成を試みたが、成功には至らなかった。
|