研究課題/領域番号 |
13F03094
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
片渕 俊彦 九州大学, 医学研究院, 准教授
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研究分担者 |
HOSSAIN Md.shamim 九州大学, 医学研究院, 外国人特別研究員
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キーワード | poly I : C / モリス水迷路 / プラズマローゲン / Akt (PKB) / 脳由来神経栄養因子 / 神経細胞死 / shRNA / レンチウイルスベクター |
研究概要 |
環境ストレスによる学習記憶障害のメカニズムと、エーテル型グリセロリン脂質であるプラズマローゲンによる学習記憶改善作用機序について以下のことが明らかになった。 ①環境ストレスの一つであるウイルス感染モデルとして、合成二重鎖RNAであるpoly I : Cをラットに投与すると、海馬依存性空間認知学習であるモリス水迷路学習行動が抑制されるが、その際海馬においてインターロイキン-6 (IL-6)の発現が増強していること、IL-6の中和抗体を前投与しておくとpolyI : Cによる学習行動障害が消失することなどから、感染ストレス時の学習行動障害におけるIL-6の関与を明らかにした。 ②プラズマローゲンを含む飼料で飼育したマウスの海馬では、細胞死の抑制や学習記憶に関連するタンパクリン酸化酵素のAkt (PKB)やERK1/2、および脳由来神経栄養因子(BDNF)の発現が増強し、モリス水迷路における学習行動が亢進していることが明らかになった。 ③神経細胞株および初代培養神経細胞において、血清飢餓による神経細胞死がカスパーゼ9およびカスパーゼ3の活性化によるものであることを示し、あらかじめプラズマローゲンを投与しておくと、これらのカスパーゼの活性化が抑制され、神経細胞死が抑えられることを明らかにした。 ④プラズマローゲンの合成酵素であるGNPAT (glyceronephosphate O-acyltransferase)およびAGPS (alkylglyceronephosphate synthase)の発現を阻害するショートヘアピンRNA (shRNA)レンチウイルスベクターをマウス海馬に注入すると、モリス水迷路学習行動が障害され、その機序としてBDNFおよびその標的蛋白であるsynapsin-1およびsynaptotagmin-1の発現が抑制されていることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
poly I : Cによる学習行動障害が海馬IL6の発現増強によることや、エーテル型グリセロリン脂質のプラズマローゲンが、海馬でAkt、ERK1/2などのリン酸化酵素および脳由来神経栄養因子(BDNF)などの学習記憶関連遺伝子の発現を増強させること、またプラズマローゲン合成酵素やBDNFのショートヘアピンRNAレンチウイルスベクターの作成に成功し、その作用を確認するなど当初計画に沿った研究結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
作成に成功しその効果を確認したレンチウイルスベクターについて、海馬局所注入と学習行動II対する作用を検討するが、そのための施設は整っており、本年度においても研究を継続するにあたって特の問題は無い。学術雑誌への発表も現在準備中である。
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