研究課題
我々は微量元素であるセレニウムの抗酸化作用と線維化の進展や発がんとの関連性に注目し、疫学調査により、じん肺患者ではセレニウムの血清濃度が減少していることを示した(Muzembo 2012)。じん肺の中でも、急性珪肺では予後の悪い肺胞蛋白症を来すが、これは異物を貪食する肺胞マクロファージの処理能力を超えたシリカ粉じんの負荷により引き起こされる。一方で、新たなじん肺類似疾患として注目されているインジウム肺では、この肺胞蛋白症と類似に現象が確認されているが、病態については未解明である。今回、インジウム肺のin vitro及びin vivo実験を行い、セレニウムの役割を検討することを目的として研究を実施した。まず、マウスの腹腔及び肺胞マクロファージ、脾細胞、骨髄由来マクロファージ、及びマウスの肺胞マクロファージの培養株、ヒト単球培養株(U-937)、ヒトマクロファージ様培養株(THP-1)、ASC-、Nalp3-、caspase-1 をノックダウンした細胞株にインジウム化合物を投与し、In vitroでの、インジウム化合物の細胞障害性及び、炎症起因性について検討を行った。インジウムの気管内投与による動物実験では肺組織の障害を検討した。これらの研究の結果、インジウム肺の機序について、これまで明らかになっていなかったマクロファージによるインジウム化合物の貪食の過程や、炎症性サイトカインの放出を詳細な検討結果は国内及び国際学会において高く評価された(Muzembo, ATS 2014など)。動物実験の結果とこれまでに我々が経験した人の症例について、併せて、論文執筆中である。ここまでの研究の遂行上の実務的な問題から、期間内には職業性呼吸器疾患におけるセレニウムの役割の解明までには至らなかったため、総説論文を執筆した(Muzembo et al. Environ Int., 2015)。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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