研究課題/領域番号 |
13F03305
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
荒川 正晴 大阪大学, 文学研究科, 教授 (10283699)
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研究分担者 |
BAI Yudong 大阪大学, 文学研究科, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ウイグル銘文 / マニ教 / キリスト教 / 敦煌 / フフホト白塔 / モンゴル高原遊牧民 |
研究実績の概要 |
本年度は主に、①西ウイグル王国の勢力拡大問題、②ウイグルのマニ教改宗問題、③10~12世紀のモンゴル高原遊牧民の歴史、④「沙州回鶻」問題、⑤10世紀のオテュケン地方と西ウイグル王国との関係、以上五つの方面から研究を行った。その内、①の内容は『中国辺疆史地研究』2014年第3号に公刊され、②の「有関回鶻改宗摩尼教的U72-U73、U206文書再釈読」は、第二回シルクロード國際学術研討会論文集「粟特人在中国:考古發現与出土文献的新印證」で刊行される予定である。③について、第51回日本アルタイ学会(2014.7.長野)と第20回遼金西夏史研究会(2014.3.仙台)で発表をした後、日本の学術雑誌に投稿中である。④は東京外大科研プロジェクト「多言語史料から見た敦煌の社会」第1回会合(2014.3.東京外大)で口頭発表をし、今は史料解読を継続中である。⑤は、史料解読はほぼ完了している。上記基礎的作業を通じて、本研究の最も重要な構成部分である「沙州回鶻」問題について、新たな視点からアプローチすることができた。特に、中国フフホトの白塔に残された古ウイグル文字銘文に対する解読から、ウイグル文字を利用するキリスト教徒が白塔を祭っていたことが知られる。更に、これによって、シルクロード沿いに東方へ発展していた西ウイグル王国に所属するキリスト教徒が、後のオングート部につながれ得るという見通しができた。オングート部と西ウイグル王国との関係を指摘できることは、ウイグル人の東方への発展についての研究にとって、とても意義の高い作業と思われる。今後は、西ウイグル王国の文字文化の発展、特に敦煌地方との交流を中心に作業を続けたい。時間的制限のゆえ、予定していたウイグル文字文化の伝播にかんしては、モンゴル高原の代わりに河西地方を中心にするつもりである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「沙州回鶻」について、研究の最初の段階において、漢籍史料に重点を置いたが、計画どおりの効果がなかった。また、10~12世紀におけるモンゴル高原の遊牧民の歴史、並びに860年ごろにおきたウイグルのマニ教への改宗について、論文を執筆した。結果的に計画の実施に影響を与えた。後半から取り組んだフフホトの白塔のウイグル銘文に対する解読から、新しい展開が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、フフホトの白塔のウイグル文字銘文の解読に基づいた研究を優先する計画である。そのため、モンゴル高原遊牧民間におけるウイグル文化の伝播問題は後回しにする。その代わり、①11から12世紀におけるキリスト教の東方への伝播、②敦煌出土Irk Bitig「占い文書」を中心にした西ウイグル王国と河西地方との文化交流、以上二点に重点をおいて、研究を続ける予定である。
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