研究課題/領域番号 |
13F03316
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
柴橋 博資 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30126081)
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研究分担者 |
BENOMAR Othman 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 星震学 / 恒星 / 自転 / 波動 / 角運動量輸送 |
研究実績の概要 |
恒星の自転は、遠心力を介して恒星の内部構造と進化に影響を与え、また、恒星の磁場活動などの諸活動の源泉にもなっていると考えられている。しかしながら、恒星内部を直接観測することができないため、実証的な研究ではあり得なかった。この状況は、ケプラー衛星やコロー衛星による、地上からの観測では成し遂げられない、長期に亘る、且つ、信号雑音比が著しく高い、恒星の脈動の観測によって、大きく変わろうとしている。 恒星の自転は、球対称からはずれた非動径脈動において、脈動の球対称からのずれ方によって振動数に差を生じさせる。この振動数の差は、恒星内部の自転に大きく依存している。そこで脈動を高精度に解析をすることによって、内部の自転の程度を知ることができる。その結果、赤色巨星段階では、内部深くでは表層に比べて、自転角速度が5ないし10倍ほど速く自転していることが分かってきた。これは予想に比べて内部自転が遅く、赤色巨星前段階で何らかの角運動量輸送が理論予想よりも効率よく働いていることを意味している。 本研究では、主系列段階の星の脈動を解析して恒星内部の自転角速度を求め、それぞれの星の吸収線分光スペクトルの解析から求めた表面回転角速度を比較することによって、主系列段階の星では、内部自転はほぼ一様に近いことを明らかにした。これは、恒星内部での角運動量輸送が主系列段階で既に極めて効率よく働いていることを意味しており、恒星の自転史の研究に大きな波紋を投げるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、サンプル数を増やすことを目的とした脈動の解析の予定であったが、主系列段階の恒星の内部自転と表面自転を比較するという新たな研究を発展させることに成功した。これは、こういった分野の最新の発展と言ってよく、刺激的な波紋を呼んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
動径方向の自転の非一様性の程度を明らかにしたが、緯度方向の自転の非一様性を明らかにすることもできると考えている。またマクロ乱流の程度も観測から実証的に明らかにできる可能性があり、そういった新たな研究を推進して行きたい。
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