研究課題/領域番号 |
13F03322
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
樽茶 清悟 東京大学, 大学院工学系研究科, 教授
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研究分担者 |
LARSSON Marcus Lennart 東京大学, 大学院工学系研究科, 外国人特別研究員
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キーワード | 量子ドット / 量子ビット / ナノテクノロジー / スピン / コヒーレント |
研究概要 |
単一光子から量子ドット中の単一電子スピンへの量子状態転写の実現へ向け、今年度は、量子状態転写に必要な量子井戸型基板と電子スピン回転に必要なコバルト微小磁石を組み合わせた量子状態転写用量子ドットの設計と作製を行い、量子ドットとしての基本動作を確認した。並行して、スピン操作のため、希釈冷凍機内に高周波配線の導入も行った。これにより本年度目標とする光生成単一電子スピン操作の準備が整った。この高周波測定系の構築では、新たな課題として量子ドット近傍の量子ポイントコンタクトを電荷計として利用し、高周波回路と接続することでインピーダンス不整合による高速電化検出測定系の導入も進め、高速電化検出を光照射と組み合わせた世界に類を見ない実験系の構築を完了した。これにより次年度よりスピン判定の正確性の向上が見込まれる。また高周波回路も40GHz対応で設計されており、高速電子スピン回転も十分可能である。量子井戸型基板はドイツのWieck教授のグループと綿密な打ち合わせを行い、提供を受けた。 当初本年度に目標としていた光生成単一電子スピンに対する電子スピン共鳴の実現には至っていないが、次年度早い段階で電子スピン操作を達成することを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
採用から半年間で、微小磁性体を備えた量子状態転写用試料作製のプロセスを確立し、素子として動作することもおおむね確認ができている。さらに希釈冷凍機中に高周波配線の導入も完了できている。加えて当初計画にはなかった高速電荷検出測定を組み込むことにも成功していることから、当初の計画以上に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
すでに実験準備はほぼ完了しているので、光生成電子スピンヘマイクロ波を印可して回転操作を実現することを目指す。これが早期に実現できれば、量子状態転写の条件を満たす波長や磁場へ移行し、回転操作を組み合わせた部分的量子状態転写の実証を目指す。この研究の過程では量子ドット動作の安定性が悪く、所望のデータが短期間で十分取得できない懸念がある。そこで特にノイズなど試料の安定性の見極めを早く行い、試料のプロセスあるいは共同研究でドイツから提供を受けている半導体基板を改善して目標の達成を目指す。
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