光刺激ルミネッセンス(OSL)年代測定法、熱ルミネッセンス(TL)年代測定法及び電子スピン共鳴(ESR)年代測定法は、第四紀における地球環境変遷のイベントの年代を求める方法として、広く使用されるようになってきた。石英を用いたOSL年代測定は信頼できる手法として確立したと言えるが、この手法では多くのテフラのように石英を含まない層準の年代を求めることができない。そこで、長石が注目され、ルミネッセンス法による年代測定が試みられるようになった。ここでその中のPostIR-IRという測定方法が有望と考えられが、この方法は堆積物に適用されていたが、特に日本においては防災上にも、また同時間面を保証するために地史の編年上重要であると考えられるテフラについては応用されていなかった。日本のテフラについて石英のOSL測定、ESR測定と合わせて年代測定法の有用性を検討した。その結果、石英を特性から見る限り、日本のテフラの石英はOSL年代測定に適さないことがわかった。また、ESR測定は年代測定に有効ではあるが、ばらつきが大きく、現在の付加線量法の手法では精度の高い年代は得られない、と判断される。一方、長石を用いたpostIR-IR測定が、少なくとも本研究で測定を試みたテフラに関して最も適した測定手法である。これまで堆積物に用いるために開発されてきたこの測定手法が、日本のテフラにもきわめて有効であることを初めて示すことができた。
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