研究概要 |
オマーン・オフィオライト(白亜紀)のマントルセクション基底部の野外調査およびサンプリングを行なった。いままでの調査で得られた試料と合わせ, 詳細な岩石学的解析を行なった。同オフィオライトのマントルセクションの多くの部分はほぼ単調なハルツバーガイト(スピネルのCr#, 0.5~0.6)よりなるが, 基底部のみ著しい不均質性を示し, 枯渇度がかなり低い(スピネルのCr#, 0.04)レールゾライトまで分布する。この大きな不均質性は基本的に部分溶融度の異なる溶け残りとして説明が可能である。この大きな部分溶融度の幅をもたらしたのは, 拡大中心からの距離であろうと思われる。さらに, 不思議なことに様々な変化図において2つの異なった溶け残りトレンドが認められる。レールゾライトには単斜輝石の偏在が認められ, クリノパイロクシナイト的な部分も存在する。これは溶け残りマントル中の残存メルトからの晶出物であろうと考えられる。さらに, 単斜輝石および全岩において, B, Li, Cs, Pb, Rbなどの流体により移動しやすい元素の付加が認められる。モーダルなホルンブレンドも認められ, 同様の元素群に富んでいる。これは, メタモーフィック・ソール形成時の累進変成作用により放出された流体によるもので, マントル・ウェッジ下底のアナログ現象である。これらのマントル不均質性は, 部分溶融時(海嶺)の温度勾配による溶融度の不均質性, 残存メルトの存否(存在度の不均質性)およびスラブからの放出流体のメタソマティズムがもたらしたと考えられる。さらに, オマーン・オフィオライトとの比較のために, 原生代のパンアフリカン・オフィオライトのマントル部の不均質性の研究を開始した。
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