研究課題
リングウッダイトとブリッジマナイトはマントル遷移帯と下部マントルをそれぞれ主要に構成している鉱物である。そこで、リングウッダイトとブリッジマナイトのレオロジー特性の理解は地球内部のダイナミクスを研究するうえで本質的に重要な課題である。変形実験はレオロジー特性を理解するうえで一般的に広く行われている手法であるが、マントル深部での条件の実験は困難であるのが実情である。他の手法として、固体物質の変形は転位の運動により制限されることがあることから、転位の動きを調べる手法が有効であり、とくに転位の対消滅速度から転位の運動を知ることが可能である。本研究では、リングウッダイトとブリッジマナイトの転位の対消滅速度を系統的に調べた。リングウッダイトについては、22 GPaで温度と含水量をパラメーターとして、ブリッジマナイトについては、25 GPaで温度に対する対消滅速度を、高圧実験によるサンプル作製と、透過電子顕微鏡による試料観察により明らかにした。結果は、リングウッダイトでは、津消滅速度は含水量の増加と共に増大した。含水量に対する影響は、オリビンの場合よりも、大きい(含水量に対して、1.1のべき指数を持つ)。また、リングウッダイトとブリッジマナイトの対消滅速度の温度依存性は、活性化エンタルピーでそれぞれ300 kJ/molと330 kJ/molとなった。近い温度依存性を示すことから、温度による両相の対消滅速度の逆転はおこらず、含水量の影響が重要なこととなった。すなわち、ブリッジマナイトの対消滅速度はドライな場合のリングウッダイトの消滅速度よりも高いが、ウエットな場合のリングウッダイトの対消滅速度よりも低い。地球物理学的観測からマントル遷移帯の粘性率は下部マントルのそれよりも低いことから、マントル遷移帯は水に富んでいると本実験結果から推察できる。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Earth and Planetary Science Letters
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