研究実績の概要 |
当研究室では、これまで分子複合系人工光合成の実現を目指して、光捕集から電荷分離、水の還元による水素発生、水の酸化による酸素発生、CO_2固定まで、光合成の各ステップを化学の力でより効率的に行う研究に幅広く取り組んでいる。また、酸素の還元触媒についても、選択的に酸素を2電子還元して過酸化水素を生成させる金属錯体触媒及び選択的に水まで4電子還元する金属錯体触媒を開発している。過酸化水素の酸化触媒、還元触媒を組み合わせた過酸化水素燃料電池の開発にも取り組んでおり、水素発生触媒についても、均一系の金属錯体触媒だけでなく、形状及びサイズを制御した金属ナノ粒子触媒を用いて水からの効率的な水素発生触媒系を開発している。 H26年度は光触媒反応や有機薄膜太陽電池などへの応用可能な超分子システムの光誘起電荷分離プロセスの研究を行った。中でも、電子アクセプターとしてリチウムイオン内包フラーレン(Li^+@C_<60>)を用い、弱い相互作用により種々の電子ドナーとのドナー・アクセプター超分子形成を行った。これらの研究の成果はChem. Eur. J. 2014, 20, 13976とChem. Commun. 2014, 50, 15796にそれぞれ掲載された。またLi^+@C_<60>を用いたドナー・アクセプター超分子において、ペリレンジイミド(PDI)や酸化グラフェン(GO)を用いた系についても光誘起電荷分離プロセスの研究を行った。GOは近年光触媒などへの応用で盛んに用いられている。またPDIは可視光領域に強い吸収を持つため、GOと組み合わせることでGOの光誘起電荷分離による光触媒活性を向上させることが期待される。これらの戦略を基に水中でGOとPDIの自己組織化集合体(GO/PDI)を構築した。その結果、GO/PDIは電荷分離が非常に速いことが分かり、水素発生光触媒などへの応用に適していることが分かった。この研究成果はChem. Commun. 2014, 50, 13359に掲載された。
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