ダイナミックな構造変化を示すマンガン錯体を合成した。結晶構造解析により二つのMn3Oコアをdca (dicyanamide) 配位子が架橋し、六核錯体を形成していることがわかった。構造の温度変化を測定したところ、dcaの中心のNと両隣のCの成す角度が温度とともに大きく変化することが分かった。-150℃、0℃でその角度がそれぞれ105.77°、105.45°であった。0℃から温度を上げると角度が大きくなり、100℃で149.93°になった。さらに温度を上昇させると角度が減少し、140℃で144.51°になった。温度変化によるクラスター構造の変形は可逆であった。また、クラスター構造の変形に伴って、結晶内でのクラスターのパッキング構造も顕著に変化した。さらに、磁性の測定からクラスター内でマンガン間に反強磁性的相互作用が働いていることが分かった。近年、温度変化により結晶変形を示す新材料の開発が盛んに行われているが、本物質は温度変化により金属錯体クラスターの構造がダイナミックに変化する新しい外場応答性材料であると言える。
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