研究概要 |
ホストーゲスト化学に立脚したグラフェンの層数に基づく分離が本研究の主題であり、その中心的役割を担うのは、我々が分子ノギスと呼ぶ、コア、コーナー、レセプターの3つの部分からなるホスト分子である。 既に我々のグループでは、コアにアントラセン、コーナーにカルバゾール、レセプターにポルフィリンを配した分子ノギスを鈴木カップリング反応により合成しており(G. Liu, N. Komatsu, et. al., J. Am. Chem. Soc., 135, 4805, 2013)、それを用いた単層カーボンナノチューブ(SWNT)の選別を行った。その結果、これまでに行ってきた分子ピンセットを用いた分離から予想されるとおり、右巻き、左巻きと直径の選別がなされ、さらに、比較的大きな直径(1.0rm以上)を有する光学活性SWNTが得られた。一方、こ. れまでの結果からは予想できなかった金属的なSWNTが半導体的なものに比べ、優先的に得られた。以上のことから、この分子ノギスは、SWNTの巻き方、直径とともに金属的性質をも識別することが明らかとなった。 この分子ノギスのレセプターのポルフィリンを市販のピレンに代えることで、分子ノギスをより高収率、簡便に合成できると考えられる。そして、平成25年度、予定通りにその合成を完了した。さらに、これを用いて、まず、単層カーボンナノチューブの分離を試みたところ、ピレンのパラ位にt-butyl基を導入することにより、直径0.90-0.99nmの金属型SWNTが選択的に抽出されることが明らかとなった。この成果は、Chem. Eur. J.に掲載されるとともに、そのイメージが表紙に取り上げられた。
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