研究実績の概要 |
微分干渉顕微鏡による線虫(C.elegans)の3次元細胞画像に対して,コンピュータビジョンの分野で用いられているオプティカルフロー検出法を適用することで,細胞分裂過程で生じる細胞質内での物質の3次元的な移動を表すフローを可視化した.その結果として,細胞分裂過程における物質の流れが,時間/空間の両方において局在化する現象を明らかにすることができた.特に細胞膜近辺での移動が,個々の細胞とも大きくなる現象を観測することが可能となった.さらに,複数の細胞の分裂に対する同様の実験から,個々の細胞が類似する現象を示す性質も明らかにすることができた.作成した可視化システムでは,細胞内の物質の移動量やその移動方向も区別して表示可能である.また,細胞の選択,細胞の可視化方向,細胞の時空間内での位置選択などを制御可能なGUIも実装した. 一方,細胞分裂周期解析の応用として,線虫以外の非染色細胞分裂画像についても,細胞内のテクスチャ解析に基づいて個々の細胞のある時刻における分裂フェーズを推定するシステムを構築した.具体的には,Chinese-Hamsterの卵巣細胞の分裂を記録した約12時間に亘る顕微鏡画像のテクスチャ解析を通して,細胞の分裂フェーズを分類するための特徴量について検討した上で,この特徴に基づく分裂フェーズ識別器を機械学習によって構築した.そして,この識別器を用いて細胞の分裂フェーズを分類するシミュレーション実験を行った.その結果,ある細胞に対して任意の時刻で撮影された連続する2フレームの画像から,与えられた細胞がG1期,G2期,M期のいずれのフェーズにあるのかを効率的に判別することが可能となった.
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