研究課題/領域番号 |
13F03349
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
片岡 一則 東京大学, 大学院工学系研究科, 教授
|
研究分担者 |
ZHENG Meng 東京大学, 外国人特別研究員
|
キーワード | 高分子ミセル / 血液-脳関門 / 脳血管内皮細胞 / ニューロン |
研究概要 |
脳は高度に発達した生体バリア(血液―脳関門(BBB))に守られているため、生理活性物質の送達が困難な部位である。そのため高齢化社会では脳神経系疾患の有病率が極めて高い一方で、それらの多くに対しては効果的な治療アプローチが見出されていない。受け入れ研究者のグループは脳血管内皮細胞に多く発現する特定受容体を介して効率的にナノ医薬品を脳実質部に送達する新規ナノ材料・方法論を開発している。当該年度においては、上記の特定受容体を効率的に認識するリガンドを表層に有する直径80nmほどのsiRNA封入型高分子ミセルの構築に成功した。構築した高分子ミセルを精密持続静注にてマウスに投与し、特定受容体の生理学的特性を巧みに制御する事で、これまでの報告例と比べても格段に脳へ集積する事、さらに効率的にBBBを通過する事をIn vivo共焦点顕微鏡を用いてリアルタイムで観察する事に成功した。さらに脳の組織切片を作製し、免疫染色後に集積細胞を共焦点顕微鏡で観察した所、多くの高分子ミセルは脳血管内皮細胞に、一部はニューロンへの取り込みが確認された。さらに高分子ミセル表層のリガンド密度をコントロールすることで上記の取込まれる細胞をもコントロール可能である事を見出した。siRNAは脳血管内皮細胞(RAGE)、ニューロン(BACE1)で機能する構造は既に知られている為に、次年度以降は当該年度で得られた結果を基に、実際に治療用siRNAを封入した高分子ミセルを構築し、アルツハイマー病モデルマウスを用いて、治療評価の検討を行なう。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は、ニューロンを標的としたsiRNAデリバリーシステムの構築を検討していたが、リガンド密度を精密に制御する事により、ニューロンはもちろん、脳血管内皮細胞(BCECs)など様々な細胞へ選択的にデリバリー可能となったため。
|
今後の研究の推進方策 |
デリバリーする標的細胞をコントロールできるシステムを開発することに成功したため、本年度はこれまでのニューロンを標的としたsiRNA (BACE1)のみでなく、脳血管内皮細胞で機能するsiRNA (RAGE)など応用範囲を拡大し、更にはモデルマウスを用いた治療実験の評価を試みる。
|