本研究は、細胞スケールでコラーゲンゲルビーズを作製し、肝臓組織工学の研究と融合することで、毛細血管網を含む三次元複合肝組織を構築することを目的としている。すなわち、細胞スケールのマイクロゲルビーズを作製し、細胞と混合してマイクロ流体デバイスに注入することによってゲルビーズが三次元組織内部において血管形成のためのスペーサーとして働き、複合三次元組織を形成させるために重要な役割をもつと考えられる。本仮説を検証するために、平成25~26年度はマイクロゲルビーズの作製条件を検討し、平成27年度は細胞培養実験への応用を中心に研究を遂行した。その結果、以下の研究成果を得た。 マイクロゲルビーズの作製法は、①マイクロ流体デバイスを用いた方法、②インクジェットノズルを用いた方法、③エマルジョンを利用した方法、の3つの手法を検討し、③の手法において所望の大きさである細胞スケールのマイクロゲルビーズを作製することに成功した。さらに、粒径分布を制御するパラメータを見出し、細胞スケールで3つの異なるサイズのコラーゲンゲルビーズを作製した。 次に、この3つのサイズのマイクロゲルビーズを肝細胞に混合して培養した。培養結果より、①本研究で開発したコラーゲンゲルビーズは細胞毒性の問題がないこと、②細胞と同等のサイズのビーズと混合培養することによって肝細胞の三次元組織化が誘導されること、③ゲルビーズとの混合培養によって肝細胞の機能も向上すること、を明らかにした。最後に、マイクロ流体デバイスにおいても混合培養を実現し、ゲルビーズと肝細胞の三次元複合組織を構築できることを確認した。以上より、本研究で開発したマイクロゲルビーズが肝細胞組織の血管化に役立つことを実証した。
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