研究課題/領域番号 |
13F03351
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
高村 由起子(山田由起子) 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 准教授 (90344720)
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研究分担者 |
GIMBERT Florian 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ナノ材料 / 二次元材料 / 第一原理電子状態計算 / シリセン / ゲルマネン |
研究実績の概要 |
平成26年度は、蜂の巣構造を持つケイ素(Si)版とゲルマニウム(Ge)版グラフェンであるシリセンとゲルマネンの多層膜についての第一原理電子状態計算を行う中で発見した、二硫化モリブデン(MoS2)を構成する層と同様の構造を持つ二次元材料の安定性について検討を進めた。フォノン分散を調べるためにより大規模な計算を行うなどした結果、Siの二次元同素体に関しては、いままでシリセンとして注目を集めていた座屈した蜂の巣構造よりも、単位面積当たりの原子数の多いMoS2構造の層の方が一原子当たりのエネルギーが小さく、より安定であることが明らかとなった。この成果は論文にまとめられ、Physical Review B誌にオープンアクセス論文として掲載された。また、これらSiとGeの二次元同素体を重ねて格子定数を変化させて多層構造を検討し、ダイヤモンド構造とそのエネルギーの大小を比較した結果、Siの場合は常にダイヤモンド構造がより安定であるが、Geの場合にはMoS2構造の方がより安定であることが明らかとなった。これらの成果により、単層シリセンやゲルマネンへのSiやGeの蒸着実験や、多層シリセンやゲルマネンの形成実験の結果を解釈する際に、この新しく発見されたMoS2構造を考慮する必要性が示唆された。これらの知見を活かし、実験的に得られたGeウェハー上二ホウ化ジルコニウム薄膜上に形成されるエピタキシャルGe層についてもその構造を検討し、基板の影響を考慮して第一原理電子状態計算を行った結果、自立した多層Ge二次元同素体の場合とは異なる、ゲルマネンとMoS2構造の中間の構造が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Siの二次元同素体に関して、現在注目を集めている座屈した蜂の巣構造よりもMoS2構造の層の方が安定であることを明らかにし、その成果をまとめた論文がPhysical Review B誌に掲載された。この成果を日本物理学会や国内で開催された国際学会で積極的に発表し、他の研究者と議論を深めた。また、実験家との共同研究も順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度SiとGeの自立した二次元多層膜の構造について得られた知見をもとに、実験的に得られているエピタキシャルなSiとGeの二次元的な多層膜の構造を第一原理電子状態計算から明らかにする。また、二ホウ化物薄膜上六方晶窒化ホウ素シートについての第一原理電子状態計算の結果と実験の結果を比較検討し、投稿論文にまとめる。
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