研究課題/領域番号 |
13F03356
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
川瀬 晃道 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00296013)
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研究分担者 |
TRIPATHI Saroj Raman 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | テラヘルツ波 / 汗腺 / 生体計測 / 発汗 |
研究実績の概要 |
テラヘルツ波は人体に安全であることから、近年テラヘルツ波の医学生体応用が期待されている。近年、ヒトの皮膚内に存在する汗腺が螺旋構造をしており、内部に導電性の汗を蓄えていることから、ミリ波・テラヘルツ波帯の電磁波に対してアンテナとして機能するということを実験的に示す報告が為された。そこで本研究では汗腺のテラヘルツ波帯での軸モードヘリカルアンテナとしての機能に注目し、測定を行った。 汗腺のヘリカルアンテナとしての共振周波数を求めるうえで重要なパラメータは、汗腺アンテナの外径とテラヘルツ波帯の角質層の誘電率である。そこで、手のひら汗腺のヘリカル構造を確認することができるOptical Coherence Tomography (OCT)を用いて、性別、年齢が異なる様々な32人の被験者に対して汗腺を測定することで正確な汗腺の外径の値を求めたところ、95 ± 11 μmとなった。また、OCTにより得た角質層の厚さと、テラヘルツ時間領域分光法による手のひらからのテラヘルツ波反射波と角質層・表皮境界面からの反射波の遅延時間用いることで角質層の誘電率を求めると5.1± 1.3となった。これらのパラメータを用いて汗腺の共振周波数を求めた結果、442±72 GHzという値を得た。 次にCWテラヘルツ波光源UTC-PDを用いて、求めた共振周波数付近において手のひらにおけるテラヘルツ波反射測定を行った。その際、発汗を観測することができる嘘発見器のデータを同時に取得し、測定中には精神性発汗を促す刺激を与えた。その結果以前求めた共振周波数の範囲内である460GHzの測定結果において手のひらからの反射の減少と嘘発見器の強度の上昇に相関が見られた。以上の結果から汗腺が440GHz付近でヘリカルアンテナとして機能している可能性があることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
様々な被験者の測定から得られた汗腺の外径とテラヘルツ時間領域分光器を用いて測定して得られた皮膚の誘電率のデータの元で汗腺の共振周波数を求めた。その後、CWテラヘルツ波光源UTC-PDを用いて、求めた共振周波数付近において手のひらにおけるテラヘルツ波反射測定を行い汗腺がアンテナとして機能している可能性があることを示した。本研究は研究実施計画通りに進行していることや上記の実績概要の理由により本年度の研究計画は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間が終了する27年度8月末まで現在の研究を引き続き推進する。平成26年度に主に汗腺は軸モードで機能した場合の共振周波数を求めたが今年度はノーマルモードで機能した場合の共振周波数を求める予定である。また、このモードの場合を考慮して電磁界シミュレーションによってテラヘルツ波が生体に与える影響を検討する。これらから得られた結果を学会や論文等で公表していく。
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