本研究では,材料のナノ構造と熱輸送機構の相関を理解し,所望の熱伝導率を持つ材料を設計・創製することを最終的な目的として,化学修飾されたグラフェン等のナノカーボン材料を有機系PCM(PCM:Phase Change Material,相変化材料)に添加することによりPCMナノコンポジットを創製し,その熱伝導率を計測することにより熱伝導率向上効果を検討した.また数値計算を行いPCM母材とナノカーボン材料の界面熱コンダクタンスがPCMナノコンポジットの熱伝導率に及ぼす影響を検討した.これに加えてナノカーボン材料の添加が他の物性に及ぼす影響を検討するため,相変化エンタルピーの計測も併せて行った. 本年度はナノカーボン材料としてカーボンナノホーンを選択し,実験および数値計算により各課題の検討を行った.また新たな試みとして,ナノカーボン材料とPCM母材との界面熱抵抗を計測するためのポンプ・プローブ光学系の準備を行った.本研究で用いたPCMはラウリン酸(C12H24O2)で,融点は43℃付近,相変化エンタルピーはおおよそ150 kJ/kgである.また添加剤にはNEC社の単層カーボンナノホーン(以下SWCNH:single walled carbon nanohorns)を用いた.SWCNHの評価はラマン分光,透過型電子顕微鏡,TGA法で行い良質なSWCNHであることを確認した.今回はSWCNHを最大2vol%まで添加したが,その際の熱伝導率(非定常細線法で計測)が純粋な母材と比較して熱伝導率が約2倍高くなることを確認出来た.本研究で得られた成果は2つの国際会議および1つの国内学会にて発表を行った.
|