研究概要 |
パーキンソン病発症原因タンパク質の一つであるαシヌクレインのアミロイド線維形成機構を分子レベルで明らかにするため, アミロイド線維形成初期に重要な働きをしているC末端領域のTyr136を他の疎水性アミノ酸残基, Leuに置換し, 核部位形成に重要なPhe94もLeuに変異させ, その挙動を調べた。シングル変異ではアミロイド線維形成は起こったが, ダブル変異体では極端にアミロイド線維形成速度が低下することが分かった。この結果は, Tyr136とPhe94の相互の関係の重要性を示している。 一方, そもそも特異的な構造を持たない, いわゆる天然変性タンパク質であるαシヌクレインはシャペロンのようなものに認識・結合するかどうか, もし結合したらどのような構造変化が起きるのかを調べるため, シャペロニンGroELの基質認識部位の役割を果たしているアピカルドメイン部分のみを用いて研究を開始した。まずは, GroELのアピカルドメインを蛋白質工学的に他の部分から切り離し, 大量発現, 精製することに成功した。このアピカルドメインのみを共存させて, αシヌクレインのアミロイド線維形成を調べたところ, ほぼ1:1の割合でアミロイド線維形成を抑制することが初めて分かった。これまで構造が大きく変性しているαシヌクレインは分子シャペロンには全く結合しないか, あるいは弱い相互作用のみであると報告されていたが, 今回, αシヌクレインのアミロイド線維凝集をGroELのアピカルドメインのみで阻害するということが明らかになった。今後, さらに詳細な実験を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
特に, これまで報告されてきていない, シャペロニンのアピカルドメインが天然変性タンパク質であるαシヌクレインと相互作用し, そのアミロイド線維凝集を阻害するということを発見したので, この現象の詳細を今後は詳細に調べていく予定である。
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