研究課題/領域番号 |
13F03383
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
河田 康志 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40177697)
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研究分担者 |
OJHA Bimlesh 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | シャペロニン / アピカルドメイン / 天然変性蛋白質 / αシヌクレイン / Aβペプチド / 凝集抑制 |
研究実績の概要 |
タンパク質のコンフォメーション変化から生じる凝集体やアミロイド線維形成は,神経変性病の発症要因の一つとなることが知られている。良く知られているタンパク質としては,パーキンソン病の原因タンパク質であるαシヌクレインとアルツハイマー病の原因ペプチドであるAβ1-42である。これらのタンパク質やペプチドの凝集(アミロイド線維)形成を抑制することができれば,病気の予防や治療に貢献することができる。我々は,分子シャペロンの一種であるシャペロニンGroELがタンパク質一般の凝集を抑制し,本来の正しい構造形成を助ける分子メカニズムの詳細を蛋白質工学的に研究してきた。本研究では,基質タンパク質と直接相互作用することが分かっているGroELのアピカルドメイン(AD)のみを蛋白質工学的に切り離して大腸菌で大量発現させ,精製し,このADがαシヌクレインやAβ1-42のアミロイド線維形成を抑制できるかどうかを調べた。ADをモル比で5倍量添加してアミロイド線維形成反応を追跡したところ,ほぼ完全にαシヌクレインとAβ1-42共にそれぞれのアミロイド線維形成反応が抑制されることが明らかになった。ADがどのようにアミロイド線維形成を抑制しているか,水晶振動子マイクロバランス装置を用い,ADを固定化しαシヌクレインを添加することで詳細に調べた。その結果,アミロイド線維形成初期中間体をADは認識して相互作用し,その後のアミロイド線維伸張を阻害していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
天然変性タンパク質であるαシヌクレインが生じるアミロイド線維をシャペロニンGroELのアピカルドメイン単独で抑制すること,さらにその他の凝集性の高いAβ1-42に対しても同様な効果を有していることを明らかにできたので,研究は順調に進んでいると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
特に,これまで報告されてきていない,シャペロニンのアピカルドメインが天然変性タンパク質であるαシヌクレインやアルツハイマー病原因ペプチドAβ1-42と相互作用し,そのアミロイド線維凝集を阻害するということを発見した。今後は他の神経変性病原因タンパク質,例えばALS発症と関係するSOD1などに対しても同様な効果が期待されるのかを調べ,その普遍性を検証する予定である。
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