研究概要 |
本研究では、染色体上に蓄積する非コードRNAが相同染色体対合に果たす役割を明らかにするために、RNAと相互作用するクロマチン因子を同定する。そのために、分裂酵母を用いて、減数分裂に特有に見られる染色体構造を分子遺伝学解析と蛍光顕微鏡解析により解析し、特にRNAの関与を明らかにすることを目指す。蛍光タンパク質を発現する分裂酵母細胞を作成し、これを蛍光顕微鏡により観察する。今年度は、変異型の非コードRNAを作成し、RNAが染色体に蓄積する仕組みを解析した。また、核膜および核膜孔のタンパク質に注目し、減数分裂の進行における役割を解析した。 1. 非コードRNAが染色体に蓄積する仕組み 非コードRNAのポリA付加サイトを欠失させると染色体に蓄積しなくなり、また相同染色体対合頻度が低下した。このことから、転写されたRNAがポリA付加と連動して染色体に蓄積すること、RNAの染色体蓄積が相同染色体対合に必要であることを示した(Ding et al., 2013)。 2. 核膜および核膜孔タンパク質の役割 当該タンパク質をコードする遺伝子を破壊し、生育への影響を調べた。生育に必須でない遺伝子については、減数分裂への影響を解析した結果、胞子形成に軽度の障害を示すものがあった。このことから、生育には影響しないが減数分裂に特有の働きを持つ一群の核膜孔タンパク質があることがわかり、この結果を論文として報告した(Asakawa et al., 2014)。また、いくつかの核膜タンパク質遺伝子を破壊したなかで、染色体の分離に障害を与える遺伝子を発見し、学会で発表した(丹下ら、2013 ; 原口ら、2013)。
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