研究課題/領域番号 |
13F03385
|
研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
松川 真吾 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 准教授 (30293096)
|
研究分担者 |
BRENNER Tom 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 外国人特別研究員
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 物質拡散 / 磁場勾配NMR / 拡散空間 / 官能評価 / 呈味成分放出 / 食品多糖ゲル |
研究実績の概要 |
前年度の検討で得られた結果を基にプローブデンドリマーの拡散係数を拡散時間を幅広く変えて行う検討を行った。その結果、デンドリマーの緩和時間は数百ミリ秒程度であり、数秒までの拡散時間での測定が難しい事が分かった。そこでプローブ高分子としてポリエチレングリコールを用いて検討を行った。しかし、拡散時間を幅広く変えるとそれに伴い、NMR緩和(T1及びT2緩和)によるピーク信号の減衰が起こり、緩和時間の長い成分が相対的に強調される結果となって、拡散時間の変化を正しく反映しなかった。そこで、NMR緩和による減衰の影響が一定となるように拡散係数測定のパルスシーケンスを作成して、拡散時間を10ミリ秒から1000ミリ秒までの幅広い範囲で変えて測定を行った。 得られた結果からはプローブ高分子の拡散係数の拡散時間依存性は非常に小さなものであり、拡散空間の構造(フラクタル次元など)を検討するには至らなかった。 ゲル構造形成過程の計算機シミュレーションから得られた結果は降温速度などのゲル化条件と保存時間によって網目構造とその隙間の拡散空間に違いが見られた。また、水透過性の実験においても網目構造の違いが反映された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度には超高磁場勾配NMRプローブの海外修理のために約2か月の間、測定不能となるトラブルのため本研究課題の中心となっているプローブ高分子の拡散係数測定に大きな遅れが出たが、今年度はこの測定を中心に行った。特に、緩和の影響を一定に保ったまま拡散時間を10ミリ秒から1000ミリ秒までの幅広い範囲で変えて行うための拡散係数測定用のパルスシーケンスを作成し、当初、目的とした測定を行う事が出来た。また、プローブ高分子としてポリエチレングリコールを用いることにより、長い拡散時間での測定を行う事が出来た。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度で検討に用いた分子量数百万のポリエチレングリコールよりも、さらにサイズが大きいプローブを用いて拡散挙動を測定することにより、拡散空間のゲル作成条件による違いを検出する。また、これらの拡散空間の違いと咀嚼時の水分放出との関連を検討する。そのために、数十ナノメートルの核にポリエチレングリコールがグラフトされたナノ粒子を用いて実験を行う。 さらに、拡散時間を数千ミリ秒まで長くするために、西シドニー大学のWill S. Price教授と共同でスピンエコー法をベースとしたパルス状磁場勾配測定を改良する。得られた成果は食品化学工学会の年次大会において発表する予定である。
|