カイコは、モデル昆虫、産業昆虫として、多様な遺伝子組換え昆虫が作出されいる。一方、遺伝子ノックインは、究極の遺伝子操作技術であると考えられているが、その効率は極めて低い。しかし、ゲノム編集技術の技術革新により、遺伝子破壊は可能となった。さらに、遺伝子ノックインを効率的に誘導するためには、DNA切断後、相同組換え(HR)を誘導する必要がある。このような状況を踏まえて、本研究では、カイコNHEJ関連因子の機能を明らかにするとともに、両経路間のクロストークを明らかにし、それらを制御することで、効率良く遺伝子ノックインを誘導する方法の確立を目指した。 まず、カイコNHEJ関連因子、およびHR関連因子の同定と機能解析を行った。同時に、新規NHEJ活性測定用のアッセイシステムを構築し、既存のHRアッセイ系と組み合わせることにより、樹立したアッセイ細胞において機能阻害し、NHEJ経路への影響、及びNHEJ経路を抑制した際にHR修復経路に与える影響を解析した。カイコNHEJ関連遺伝子と想定していた遺伝子の多くは、機能阻害によりNHEJ効率が著しく低下したことから、これらの機能不全が、効率的な遺伝子ターゲティングを誘導できることを示唆していた。そこで、NHEJ関連遺伝子についてノックアウト細胞を樹立した。 次いで、ゲノム編集用のCRISPERと同時にHRの鋳型となるDNAを導入したところ、TUDOR-SN遺伝子内の相同配列とカイコゲノム間で、遺伝子ターゲティングが誘導され、TUDOR-SN遺伝子内に正確にGFP遺伝子をノックインすることができた。また、その際、挿入のための相同性のあるアーム部分の長さは、100 bpから250 bpで十分であることも確認できた。この場合、RNAiによるNHEJ関連遺伝子機能阻害細胞でより効率的に遺伝子ノックインが誘導できることを明らかにした。
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