研究課題/領域番号 |
13F03389
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中山 二郎 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40217930)
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研究分担者 |
SINGH Ravindra 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | クオラムセンシング / グラム陽性日和見感染菌 / 阻害剤スクリーニング / ペプチドデザイン / アンタゴニスト / デプシペプチド / ヘモリシン |
研究実績の概要 |
クオラムセンシング(QS)とは、多くの細菌が持つ菌密度依存的遺伝子発現制御機構のことで、オートインデューサーを分泌し、同種菌を刺激し合い、タイミングを合わせてある種の遺伝子の発現をオンオフさせる。病原菌では、病原因子の遺伝子をQSにより制御し、宿主へ効率よく感染できるようにしている。抗生物質耐性菌が問題となる今日において、QS阻害剤(QSI)は、薬剤耐性菌の出現を助長することなく、病原菌の病原性を抑えるということで注目されている。ウェルシュ菌Clostridium perfringensは食中毒やガス壊疽を起こす病原菌で、そのヘモリシン等の病原因子の生産をVirRS系と呼ばれるQSでえ制御している。本研究では、ウェルシュ菌のQSIを創製し、ウェルシュ菌に対する抗感染症剤を創出すること目標としている。QSIの創製には、(1)天然物のスクリーニング、(2)ドラッグデザイン、の2つの手法により行っている。(1)では、腸球菌および黄色ブドウ球菌のQSIのスクリーニングで見出された放線菌由来の環状デプシペプチドWS9326AがIC50=880 nMでC. perfringens strain 13におけるPerfringolysin Oの遺伝子発現を阻害することを見出した。(2)では、ウェルシュ菌のオートインデューサーペプチドのアンタゴニスト創製に着手した。その結果、2つの強力なアンタゴニストペプチドZ-cyclo(CAWFT)とcyclo(CLFWT)の創製に成功した。Z-cyclo(CAWFT)とcyclo(CLFWT)はClostridium perfringens strain 13の溶血素であるperfringolysin Oの遺伝子発現をそれぞれ、IC50=320 nMとIC50=440 nMで阻害した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
天然物のスクリーニング研究から一つのQSIを見出し、ドラッグデザイン研究から2つのQSIを創出することができたので、研究は概ね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
天然物のスクリーングおよびドラッグデザインともにこれまでの研究をさらに加速させ、より多く、またより強いQSIを見つけ出していきたいと考えている。さらに、これまで見出されてきたQSIの構造から、構造活性相関のコンピューターによりシュミレーションを行い、QSIの候補となる天然物をバーチャルでスクリーニングする。アンタゴニストペプチドのデザインも同様に進めていく。
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