研究課題
バベシア原虫は、マダニによって媒介され、人や動物の赤血球内に寄生し、重篤な溶血性貧血を引き起こす病原体である。しかしながら、バベシア原虫感染症に対する有効な治療法や予防法はいまだに開発されていないのが現状である。その主な理由の一つとしてバベシア原虫感染により引き起こされる溶血性貧血のメカニズムが解明されていないことが挙げられる。そこで本研究では、バベシア原虫感染症における溶血性貧血機構の解明を目指した。得られた研究成果の概要は下記の通りである。(1)ネズミバベシアに感染したマウスの血清中に赤血球に対する自己抗体の上昇をELISA法にて検出出来た。この自己抗体は、感染直後から検出され始め、パラシテミア(感染赤血球比率)上昇に伴い上昇した。また、自己抗体のピークはパラシテミアのピーク後に現れた。(2)自己抗体のIgGサブクラスを調べたところ、IgG2a優位の自己免疫反応であることが判明した。(3)正常マウス赤血球のタンパク質成分を2次元電気泳動で展開した後に、自己抗体を用いてイムノブロットを行ったところ、計5種類の特異反応タンパク質が検出された。(4)上記で検出されたタンパク質について質量分析(MALDI-TOF-MS)を行ったところ、赤血球の骨格と膜の形成に関わるスペクトリンα1とβアクチンが特定出来た。(5)スペクトリンα1とβアクチンに対するウサギの抗体を作製し、正常赤血球に対する溶血活性を調べたところ、抗スペクトリンα1抗体が犬の正常赤血球を顕著に溶血した。これらの結果は、バベシア原虫感染症における自己免疫性溶血性貧血の分子機構の全容解明につながるものと考えられる。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Parasit Vector
巻: 9 ページ: 257
10.1186/s13071-016-1518-1.