Ellagitannin類は1910年代から知られている化合物群であるが、近年その抗腫瘍活性や抗ウイルス作用により、再度注目され、合成法が盛んに検討されている。当研究室ではEllagitannin類の中でも、最も単純な構造を持つ strictinin の全合成を検討し、無保護D-glucoseから5工程で得ている。そこで、さらに複雑な構造を持つ tellimagrandin II と pterocarinin C の全合成を計画した。これらの全合成は、当研究室の他のグループが中心となって、無保護グルコースからそれぞれ6段階ですでに達成した。そこで、本研究では、これらの配糖体天然物合成で問題となったグリコシル化法について、新たなチャレンジを行うこととした。Jacobsenらはチオウレア触媒がハロアセタールからオキソニウムを生成させ、求核剤との反応を促進することを報告している。そこでハロアセタール構造を持つグリコシルドナーからのオキソニウムの生成と、その位置選択性の制御を期待し、チオウレア型触媒を設計・合成した。これらのチオウレア型触媒とグルコース誘導体を用いる位置選択的グリコシル化を検討したが、目的としたグリコシル化が効率的に進行する条件を見いだせなかった。そこで、ウレア部位やチオウレオ部位がハロゲン化の良い触媒であることに注目し、芳香環のハロゲン化による遠隔位不斉誘導へと展開した。種々、条件を検討した結果、35% eeで遠隔位不斉ハロゲン化による不斉非対称化が進行した。
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