研究実績の概要 |
骨粗鬆症は、現代の超高齢化社会において急速に増加しており人口の約一割の患者数が罹患すると推定され、大腿骨の頸部骨折や脊椎の骨折を起こし、重症例では骨折の後の死亡率の高い重要な疾患である。しかし、骨粗鬆症の根幹である骨量減少がどのようなメカニズムで病態を引き起こすのかについて、未解明の点が多い。そこで、骨芽細胞の細胞遊走(運動)の検討を行った。近年、骨芽細胞の遊走に遺伝子が関わることが、骨量減少との関連は不明であり、骨粗鬆症を引き起こすメカニズムの上で詳細は解明されていませんでした。骨は絶えず リモデリングをくりかえしており、まず破骨細胞が古い骨を吸収して 吸収部ができ、その後で、骨芽細胞ならびに前駆細胞がこの部分に遊走しかつ増殖をして正確にこの場所でかつ必要量のみの骨を形成することにより欠損部が充填され、古い骨が新生骨に置換しかつ元の骨の量が保たれるメカニズムにNckが関与することを明らかにした。すなわち骨リモデリングにおける骨芽細胞の遊走による骨形成の仕組みを明らかにするために、細胞の骨格と細胞遊走を制御する遺伝子であるNckを骨芽細胞で特異的に破壊してその影響を調べた。 Nckは 細胞のシグナルのうち 細胞骨格を制御するアダプター分子であり 骨の代謝との関連は不明であったが本研究の結果、Nckを欠失すると 骨芽細胞の遊走を抑制すること,細胞シグナルが変化すること、骨量が低下すること、骨形成速度が低下すること、さらに 骨の生体内での修復が抑制されることが明らかになった。
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