研究課題
(1)まず、10週齢ラットの膝関節腔にモノヨード酢酸(MIA)を注入して変形性関節症を誘発させ、免疫組織染色にてCCN3の発現とその局在を調べたところ、正常な膝関節と比較して、MIAにより変形性関節症を誘発した膝関節では染色性の低下~消失の見られた領域、つまり、プロテオグリカンが少ない領域では、CCN3タンパク質は検出出来なかった。一方、軟骨修復機転とされている軟骨細胞クラスターではCCN3の存在が確認出来た。(2)次に、piggyBacトランスポゾンシステムにてHAタグ付きヒトCCN3(rCCN3HA)をドキシサイクリン誘導性に発現するベクターを構築し、ラット関節軟骨初代培養細胞に導入し、同細胞がコンフルエント状態になったところで、ドキシサイクリン4μg/mLを添加してCCN3を誘導し、二週間後にRNAを回収して、リアルタイムPCRおよびアルシアンブルー染色を行った。その結果、関節軟骨細胞に特異的な遺伝子であるTenascin-CとLubricinのmRNAが上昇し、軟骨共通マーカーであるCollagen Type 2のmRNAが上昇した。更にプロテオグリカンの蓄積量も増加した。(3)低出力超音波パルス(LIPUS)がラット変形性関節症モデルでCollagen Type 2の発現を上昇させることが報告されているため、7週齢ラットの膝をLIPUS処理し、4時間後に大腿骨膝関節軟骨からRNAを抽出し、リアルタイムPCRにてCCN3mRNAの変動を調べたところ、対照(対側大腿骨膝関節軟骨)と比べ、LIPUS処理を受けた膝関節軟骨の方ではCCN3mRNAが上昇した。
2: おおむね順調に進展している
正常な関節軟骨に存在するCCN3が、MIAにより変形性関節症を誘発した軟骨では、軟骨細胞外マトリックスが減少した部位では消失し、軟骨修復機転と考えられる軟骨クラスターには存在すること、また、CCN3が関節軟骨培養細胞の細胞外マトリックス産生を促進することを明らかにした。つまり、CCN3が関節軟骨において軟骨防御効果があることを示唆するデータを得た。今後、CCN3が変形性関節症に対する防御効果を示す直接的な証拠、即ちin vivoでの実験結果を得ることが出来れば、本研究の目的を果たすことが出来る。
1) IPUSがin vivoでCCN3発現を上昇させることを見いだしたので、モノヨード酢酸(MIA)による変形性関節症の誘発をLIPUSで防御出来るかどうかを明らかにする。2) piggyBacトランスポゾンでrCCN3HAの発現を誘導するシステムを構築したのでこれを用いて、関節軟骨初代ペレット培養細胞において軟骨形成を促進するか否かを調べる。3) これらの間接的証拠だけではなく、直接的証明として、CCN3がMIAにより誘導される変形性関節症に対し防御効果を有することを明らかにすべく、ヒト組換えGST-CCN3を適切な徐放性を有するgelatin hydrogelを徐放剤として選択し、MIAと共にラット膝関節腔へ投与し、MIAによる変形性関節症の誘発を防止するか否かを、組織学的に調べる。
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J. Biochem.
巻: 157 ページ: 91-100
10.1093/jb/mvu056
http://www.dent.okayama-u.ac.jp/arcocs/