研究課題/領域番号 |
13F03510
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
田中 元雅 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, チームリーダー
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研究分担者 |
マタディナータ ヘリー 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 外国人特別研究員
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キーワード | アミロイド / 酵母プリオン / 分子シャペロン / プリオン病 |
研究概要 |
酵母プリオンの伝播機構を解明する目的で、今年度はまず、一分子力学計測やNMR測定のための各種試料調製を行った。酵母プリオンSup35凝集体の伝播に必須な三種類の分子シャペロンの大腸菌中での発現と精製を行った。ルシフェラーゼやGFPの凝集体を用いた実験から、これらのシャペロンがATPに依存して脱凝集活性を示すことを確認した。また、既報通りHsp104が酵母プリオン断片であるSup35NMの凝集化を促進させることも確認した。これらの結果から、分子シャペロンの調整法がほぼ確立できたことを意味している。さらに、Sup35NM一分子を光ピンセットを用いて引っぱり、力学計測を行うための試料調製を行った。引っ張る時の取っ手としての二本鎖DNAをSup35NMのアミノ末端とカルボキシル末端に結合させたDNA-Sup35NM-DNA複合体を調製し、Hisタグカラムを用いてこの複合体の高度な精製に成功した。 一方で、Sup35NMモノマーと各種シャペロンとの結合様式を解明する目的で、NMR測定を行うため大同位体(13C, 15N, D)ラベルを含むタンパク質調製および実験系の構築を行りた。DOSYなどのNMR測定から、Sup35NMと各種シャペロンとの直接的な結合を見出した。さらに、Sup35NMと各種シャペロンとの結合を調べるため、Native PAGEやビアコア、分析用超遠心を用いた実験を行った。その結果、各種シャペロンとSup35NMのモノマーやオリゴマーが直接、結合していること牽見出した。今後、その結合様式について詳細に解析し、さらにSup35NMアミロイドとシャペロンとの結合についても検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大きな難関の一つであると思われたHsp104などの各種シャペロンの高度な精製に成功し、それらを用いて、タンパク質凝集体に対する脱凝集活性が確認でき、また、これらシャペロンと酵母プリオンタンパク質Sup35NMとの直接的な結合もNMRやビアコアなどで確認できたため。
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今後の研究の推進方策 |
脱凝集活性を示すことが確認できた分子シャペロンを用いて、分子シャペロンの存在、非存在下でのSup35NMの一分子構造解析を行い、分子シャペロンがSup35NMモノマーのコンフォメーション空間を変化させるか検討を行う。また、NMRを用いて、分子シャペロンがSup35NMモノマーやオリゴマー、アミロイドのどのアミノ酸の部位に結合し、モノマーの凝集促進化やアミロイドの断片化をもたらしているかを明らかにする。
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