研究課題/領域番号 |
13F03513
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研究機関 | 独立行政法人農業生物資源研究所 |
研究代表者 |
小松田 隆夫 独立行政法人農業生物資源研究所, 作物ゲノム研究ユニッ ト, 研究員 (60370657)
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研究分担者 |
DAI Fei 独立行政法人農業生物資源研究所, 作物ゲノム研究ユニッ ト, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 栽培起源 / オオムギ / コムギ / 小穂 / 脱落 / 遺伝子単離 / 突然変異 |
研究実績の概要 |
小穂脱落性とは麦類野生植物の成熟した種子が地面へ分散する性質のことである。ムギ類では野生種の小穂脱落性が栽培化過程で徐々に失われ、非脱落性個体が占める割合が徐々に増加し、最終的に現在のような栽培種が完成した。ムギ類脱落性から非脱落性への移行は今から一万年ほど前に開始され、数千年間のあいだ連続したゆっくりとしたプロセスあることが最近の考古学的研究によって示唆されている。
本年度はオオムギで単離された小穂非脱落性遺伝子の塩基配列を利用してコムギ栽培種および野生種から遺伝子を単離して塩基配列を比較した。その結果オオムギ小穂非脱落性遺伝子のコムギ同祖遺伝子に突然変異が生じたことが原因となって栽培化されたことが明らかになった。
既知の小穂脱落性遺伝子に加えて新たな小穂脱落性遺伝子を探索するためや野生オオムギの変異源EMS処理によって新たな変異集団の作成を開始した。材料に用いた野生オオムギOUH602は強い種子休眠性を持っている事で知られている。過酸化水素水H2O2処理後35mMのEMS処理をおこなった11,200粒の種子から約7,000のM1個体が発芽し生育している。種子稔性の調査とM2種子採取をおこなうところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小穂脱落性とは麦類野生植物の成熟した種子が地面へ分散する性質のことで、作物の栽培起源を研究するうえで最も重要な形質である。本年度は予定した通り、オオムギで単離された小穂非脱落性遺伝子の塩基配列を利用してコムギオオムギ小穂非脱落性遺伝子のコムギ同祖遺伝子できた。その結果オオムギ小穂非脱落性遺伝子のコムギ同祖遺伝子に突然変異が生じたことが原因となって栽培化されたことが明らかになった。 昨年度の予備試験のデータをもとに、加えて新たな小穂脱落性遺伝子を探索するためや野生オオムギの変異源EMS処理によって新たな変異集団が作成できた。具体的には野生オオムギOUH602のEMS処理をおこなった11,200粒の種子から約7,000のM1個体が発芽し生育することが出来た。これにより、仮に稔実率50%だとしても3,500のM2集団を作成できる。 さらにこれまでの研究蓄積をもとに、オオムギ栽培起源に関する論文を作成し、国際誌へ投稿した。 以上のことから、本研究をおおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
オオムギ小穂非脱落性遺伝子のコムギ同祖遺伝子を倍数性コムギから抽出し、栽培種および野生種から遺伝子を単離して塩基配列を比較する。そして同祖遺伝子に突然変異が生じたことが原因となって栽培化されたという仮説を実験データで検証する。これらのデータをもとに研究論文を作成し投稿する。
M2集団を播種、育成し、DNAを抽出して変異集団を作成する。圃場栽培により、小穂非脱落性の突然変異体を探し出す。
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