研究実績の概要 |
オオムギで単離された小穂非脱落性遺伝子btr1、btr2がムギ類で普遍的に存在し機能する事を確かめる目的で、二倍体の一粒系コムギTriticum monococcumから相同遺伝子を単離して塩基配列を決定し、栽培化に伴う原因突然変異を明らかにした。具体的には京都大学から分譲されたTr. monococcum ssp. boeoticum Boiss(小穂脱落)を33系統、Tr. monococcum ssp. monococcum L.(小穂非脱落)を20系統供試し、Pourkheirandish M, Hensel G, Kilian B et al., 2015. Evolution of the Grain Dispersal System in Barley. Cell. 162: 527-539.で公開された塩基配列をもとにPCRプライマーを設計してDNA増幅をおこなった。 Btr1 のサイズは2.3-kb で ssp. boeoticumでは7 ハプロタイプ 、ssp. monococcum では1 ハプロタイプ を示した。コード領域の変異として、ssp. boeoticumのGCC (Alanine) から ssp. monococcum LのACC (Threonine)への置換がすべてのssp. monococcum L系統に共通することから、ssp. monococcum Lの小穂非脱落性の原因突然変異候補と考えた。もう一つの変異は同義置換であった。 Btr2 のサイズは1.7-kb で、ssp. boeoticumでは3 ハプロタイプ 、ssp. monococcum では2 ハプロタイプ を示した。ssp. monococcumへの非同義置換のうち、一つはssp. boeoticumの一部の系統にも共通したため小穂非脱落性の原因突然変異候補から除外した。ssp. monococcumへの非同義置換のもう一つはssp. monococcum に特異的ではあるものの僅か一系統で見いだされたことから二次的な変異と考えられ、小穂非脱落性の直接の原因突然変異候補から除外した。 以上の結果から、ssp. monococcumはBtr1 における突然変異に起因する単一起源である事が強く示唆された。
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