研究課題/領域番号 |
13F03726
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
板垣 竜太 同志社大学, 社会学部, 准教授
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研究分担者 |
マイケル シャピロ 同志社大学, 社会学部, 外国人特別研究員
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キーワード | キリスト教青年会(YMCA) / 清教徒 / 徳富蘇峰 / 毎日申報 |
研究概要 |
先年度(2013年9月~2014年3月)の研究目的は、主にキリスト教青年会(YMCA)運動の日本と朝鮮と世界における発展に関する研究を行うことにあった。この目的に向けて、まずアメリカとイギリスにおける17世紀の清教徒が試みた教会を中心とする社会から非教会的(あるいは平信徒的な)な空間が生じ、結果的に20世紀の平信徒運動としてのYMCAの世界的普及を可能にした歴史的背景について研究する必要があると考え、同志社大学の図書館を利用し資料調査を実施した。この研究結果に基き、日本と朝鮮におけるキリスト教の平信徒達がキリスト教と国民主義を結びつけるための非教会的手段としてどのようにYMCAを活用したのかを明らかにすることができると考える。この仮説を裏付けるため、2月16日から3月4日まで米国(ミネソタ大学ミネアポリス校北米YMCA歴史資料館、イェール大学神学図書館)に出張し、日本と朝鮮における初期のYMCA運動について資料調査を行った。 また、プロテスタント教徒でジャーナリストであった徳富蘇峰が、1910年代の植民地朝鮮における唯一の朝鮮語新聞であった「毎日申報」の監督として果たした役割についての研究も行った。特に同志社大学の人文科学研究所を利用し、徳富が日本で経営していた「国民新聞」を研究し、「毎日申報」の社説内容との共通点を探った。この結果、「毎日申報」が日本人と朝鮮人を同一民族として扱う同化政策を批判しており、むしろ朝鮮民族の独自性を尊重した上で日本の皇室に対する忠誠心を培うことによって同化できる可能性を提示していることが明らかになった。こうした「毎日申報」の論調は、キリスト教に深く影響を受けた徳富が、個人生活に究極の目的が不可欠だと主張する立場から来ていると思われる。近いうちにこの研究を論文にまとめて発表したいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
キリスト教青年会(YMCA)運動の日本と朝鮮と世界における発展を明らかにするという先年度の研究目的は、大体において達成できたと思われる。しかし、まだ説明できていない課題も残っており、今年度に北米YMCA歴史資料館への再度の出張が必要になると考える。なお、もともと今年度に予定していた、徳富蘇峰と植民地朝鮮とのつながりについての研究が大きく前進したこともあり、全体としての研究は順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は以下の四つの通りである。 ① 先年度の研究結果を論文にまとめる。北米YMCA歴史資料館への再度の出張を行う。 ② 朝鮮人と関わりが深かった日本キリスト教徒(特に海老名弾正と吉野作蔵)について研究し、収集した資料を読みすすめる。徳富蘇峰と植民地朝鮮についての研究を論文にまとめて発表する。 ③ 1910年代の植民地朝鮮における基督教弾圧事件としてよく知られている「105人事件」について研究をする。 ④ 在日朝鮮人留学生のキリスト教についての思想を明らかにするために, 韓国の延世大学校の国学資料院に出張し、当時の留学生が出版した刊行物を調査する。
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