本年度の研究目的は、現在までの研究をシャピロ氏が書籍にまとめることにあった。その内容は、日本帝国とグローバル規模のキリスト教伝道事業を代表するキリスト教青年会(YMCA)との二重の枠組みのなかで、日本と朝鮮におけるキリスト教徒がどのような関係を結んだのかを解明しようとするものである。 この目的に向けて、2冊の出版企画書をまとめた。一つは日本・朝鮮・中国のYMCA運動の起源と相互関連を取り上げ、それらが植民地朝鮮においてどう交差したのかを問うものである。これまでの研究では、この過程を単に<非キリスト教勢力 対 キリスト教勢力>の衝突として扱うことが主流であったが、この研究ではキリスト教青年会(YMCA)に焦点を当て、このグローバル規模のキリスト教伝道団体と日本帝国における天皇制という二つの異質的な制度が、いかに植民地朝鮮において妥協点を探りながら共存しようとしたのかという観点に基づき二者の関係の解釈を試みる。 もう一つの企画書は、プロテスタント教徒で有名なジャーナリストだった徳冨蘇峰が朝鮮総督府の御用新聞であった『毎日申報』の監督として果たした役割を取り上げる書籍の出版企画書である。1910年代の毎日申報を取り上げている先行研究では、監督の徳富蘇峰の編集方針を度外視してきたが、この発見によって朝鮮における最初の近代小説家とされる李光洙(イ・グァンス)との意外な思想的関係が明らかになる、というのがこの本の主張である。 これをもとに、現在、出版企画が進んでいる。
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