研究課題/領域番号 |
13F03734
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 薫 東京大学, 大学院理学系研究科, 教授
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研究分担者 |
MIHALIKOVA Maria 東京大学, 大学院理学系研究科, 外国人特別研究員
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キーワード | 大重力波 / 大気大循環 / 大型大気レーダー / 中層大気 / 気候モデル |
研究概要 |
大気重力波は大気中の浮力を復元力とする小規模な波動である。その起源は主に対流圏にあるが、成層圏や中間圏に伝播し、砕波・減衰して運動量を落とすことで、全球規模の大気大循環の主要な駆動原となっている。現在の全球気候モデルや、化学気候モデルでは、重力波は解像されないため、主にパラメータ化してその作用のみが組み入れられている(パラメタリゼーション)。これらの、パラメタリゼーションには様々な仮定や調節係数があるが、それらを調整してもなお、モデルには冬季極域成層圏の温度の低すぎたり、南極のオゾンホールの季節変化が正しく再現されないなどの系統誤差を持つ。これは、現実の大気重力波の特性に関する観測的研究や理論研究が十分でないためである。本研究では、重力波解像大気大循環モデルや、最近観測が開始された南極大型大気レーダーの観測を用いて、大気重力波の発生メカニズムや力学特性、季節変化等を明らかにすることを目的とする。 今年度は、2012年4月から行われている南極大型大気レーダー(PANSYレーダー)の観測データを用いて、昭和基地での対流圏・下部成層圏の大気重力波の力学特性の解析を始めた。特に質の良いデータが得られた2013年3月の1か月間データを用いて、顕著な重力波の見られた2ケースにつき、Sato (1994)での手法を参考に、重力波の偏波関係式、分散関係式を駆使して水平波長や水平位相速度、伝播方向の推定を行った。このとき昭和基地のラジオゾンデによる温度の観測データも大気安定度の解析に用いた。その結果、卓越重力波の鉛直エネルギー伝播は上向きであり、鉛直波長は1.5-2.2km、水平波長は75-200kmであることなどがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
解析は、初期的な結果を出すにとどまっているが、これは、8月に研究室の解析サーバやソフトウェア、購入したPC等の研究環境になれるのに時間がかかったため、解析は当初予定より遅れがちである。しかし、研究環境になれるフェーズは過ぎて、データ解析は少しずつ進んでいるので、今後は、解析事例を増やしたり、より踏み込んだ力学的考察を行なうことなどができると予想している。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に開始した、PANSYレーダーで観測された重力波の力学解析について事例を増やし、季節特性の解析に発展させる。全球客観解析データを用いた解析により重力波の発生メカニズムについて考察する。余力があれば、高解像度大気大循環モデルによるシミュレーションデータを用いた研究に発展させ、極域重力波の全球運動量収支における役割を明確化する。
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