研究課題/領域番号 |
13F03741
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石井 和之 東京大学, 生産技術研究所, 教授
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研究分担者 |
YANYAN Mulyana 東京大学, 生産技術研究所, 外国人特別研究員
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キーワード | 人工光合成 / 金属錯体 / 水酸化触媒 / 電子移動 / 光電気化学 |
研究概要 |
水を酸素分子と水素分子へ分解する反応は、クリーンエネルギーとして注目されている水素分子を生成する。この反応は、過剰エネルギー・大きな過電圧を必要とするため、効果的な水分解触媒の開発が必要であるが、この際、太陽光エネルギーの利用は重要である。 本研究の目的は、色素による光集光システムと水の酸化分解触媒であるルテニウム錯体を組み合わせることで、光エネルギーで駆動する新規色素-触媒超分子システムを構築することである。具体的には、構築した色素-触媒超分子システムを電極上で作成し、その光電気化学的触媒能を検討するとともに、本システムの励起状態エネルギー移動・電子移動・電荷分離状態を電気化学・光電気化学・時間分解分光の観点から明らかにする。 今年度は、水酸化触媒活性が高い[Ru (terpy)(bipy)(H_2O)]^<2+>錯体に着目し、研究を遂行した。 [Ru (terpy)(bipy)(H_2O)]^<2+>錯体及びアルキル鎖で連結した二量体を合成し、それらの電気化学的及び光電気化学的性質を調べた。[Ru (terpy)(bipy)(H_2O)]^<2+>錯体では、水酸化に由来すると考えられる電流が1.7V (vs Ag/AgCl)で観測されたが、光照射効果は観測されなかった。一方、アルキル鎖で連結した[Ru (terpy)(bipy)(H_2O)]^<2+>二量体においては、単量体では観測されない光照射効果が観測された。これより、[Ru (terpy)(bipy)(H_2O)]^<2+>二量体は、光電気化学的触媒能を有する錯体であることが初めて示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
10月に来日し、3月までの半年間で、①水酸化触媒活性が高い[Ru (terpy)(bipy)(H_2O)]^<2+>錯体及びアルキル鎖で連結した二量体の合成、②研究目的に適した光電気化学システムの構築、③光導波路を用いた電解吸収測定システムの構築などを行っている。光電気化学測定の結果、アルキル鎖で連結した[Ru (terpy)(bipy)(H_2O)]^<2+>二量体が、光電気化学的触媒能を有する錯体であることも示唆されているため、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
[Ru(terpy)(bipy)(H_2O)]^<2+>錯体及びアルキル鎖で連結した二量体について、①光導波路を用いた電解吸収測定、②超高速過渡吸収測定等を行うことで、励起状態エネルギー移動、電子移動、電荷分離状態の性質を明らかにする。次の段階においては、色素-触媒超分子システムを電極表面に結合させた系の構築も行う。具体的には、FTOやITO電極上へ、色素-触媒超分子システムを結合させることで、光陽極を構築し、その光電気化学的挙動を調べる。この光陽極についても、超高速過渡吸収測定などの時間分解測定を行い、励起状態エネルギー移動、電子移動、電荷分離状態の性質を調べることで、その光触媒能を明らかにする。
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