研究課題
本課題は、東南極で行っていたModerate-Resolution Imaging Spectroradiometer (MODIS)の可視・赤外線データから定着氷を検出する手法を、全南極に適用することが主なテーマである。このため、極めて多量の全南極沿岸域のMODISデータ(80TB)の中から、雲のないデータを選別する必要がある。平成25年度は、今までマニュアルで行っていた選別作業を自動化する手法を開発し、有用なデータ(17TB)のみをダウンロードした。さらに、これらのデータに衛星の角度補正を行ったうえで、全南極沿岸域のグリッドデータセットを作成した。これらにより、定着氷の検出を行うための前処理がすべて完了し、2000-2013年の14年間、MODISデータから南極全域での定着氷マッピングの時系列作成が可能となった。データセットが完成すると、様々なモデルの境界条件にも利用されうる。なお、すでに作成した東南極の一部の定着氷時系列データは、流氷と定着氷の経年変動における関係性、メルツ氷河および周辺定着氷の激変による高密度水及び炭素循環へのインパクト研究、皇帝ペンギンの生態と定着氷との関係、などの研究に利用され、論文も受理されている。また、MODISから定着氷を検出する手法は北極海でも適用され、北東グリーンランドにおいて、初めて高精度な定着氷時系列データを作成した。これらの研究成果の主なものは、平成26年3月にオーストラリア・ホバートで開催された国際雪氷学会(IGS)で発表されている。
2: おおむね順調に進展している
多量のMODISデータの前処理という最も時間を要する部分が終了したこと、当初の予定通り14年間の全南極沿岸域のデータの解析が可能となったこと、本手法を北極海へ適用しその有用性が示されたこと、研究の成果論文が数本受理されたこと、などから研究は順調に進展していると言える。
次年度より、全南極においてMODISから定着氷を検出する解析が始まるが、データが極めて多量にあるため、今までマニュアルでやっていた処理を自動化する必要がある。そのためには類似の手法を北極海で行っているドイツのトゥリア大学のWillmes博士と共同研究することが最も有効と考えており、平成26年6月に博士を招聘して共同研究を開始する予定である。高精度の定着氷時系列データが作成され次第、当研究グループが取得したケープダンレー沖の係留系時系列データとの比較研究を行う予定である。
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