研究課題/領域番号 |
13F03750
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮島 篤 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 教授
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研究分担者 |
CINDY Kok 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 外国人特別研究員
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キーワード | 肝臓 / 再生 / 幹/前駆細胞 / ニッチ / 細胞間相互作用 / シグナル / 線維化 / 肝がん |
研究概要 |
重篤な、あるいは、慢性的な障害を受けた肝臓では、未分化性を有する特殊な肝前駆細胞(LPC)が活性化して組織の再生に寄与すると考えられている。LPCの誘導・増殖・分化を制御する分子機構については未だ不明な点が多い。また、LPCと肝繊維化や肝がん等の病態との関連が長らく想定されているものの、その実態や機序は未解明である。我々は近年、マウス肝障害モデルを用いて、LPC制御に関わる「ニッチ」の存在・重要性と、LPC - ニッチ相互作用におけるFGF、Wnt、Notch等の細胞間シグナルの関与を明らかにしてきた。本研究では、これらシグナルの相互連関・協働作用に注目しながら、LPCおよびニッチの性状と制御機構のさらなる理解を深め、さらに肝臓の病態における役割を明らかにすることを目的とする。 障害肝において、Thy1陽性の間葉系細胞がFGF7の産生細胞としてLPCに対するニッチを構成することがすでに明らかとなっている。一方で、WntやNotchについては、それらリガンドの産生細胞やシグナルの作用機序が必ずしも明確になっていない。本年度は、種々のマウス肝障害モデルにおいて、これらシグナルの産生細胞・受容細胞の検討を行った。Wntファミリー、Notchファミリーを構成する種々のリガンドや受容体が、障害肝において様々な細胞種に異なるパターンで発現していることが明らかとなった。マウス生体肝臓内の特定の細胞種においてWntシグナルやNotchシグナルを欠損(loss-of-function)あるいは人為的活性化(gain-of-function)させた場合の影響を調べる目的で、それらのシグナル伝達経路の構成因子に関する種々の遺伝子改変マウス系統の交配を行った。それらのマウスに、四塩化炭素やチオアセトアミド、DDC等の薬剤投与を行うことで、炎症反応や繊維化を伴う各種肝病態モデルの作製を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の当初の研究計画について、おおむね達成できた。遺伝子改変マウスの交配および各種肝病態モデルの作製により、平成26年度以降の解析のための準備が進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
LPCおよびニッチの性状と制御機構、肝臓の病態における役割を明らかにすることを目指して、引き続き解析を行っていく。今後、LPC、ニッチ構成細胞、および他の肝臓構成細胞における遺伝子機能解析を行うための新たな実験系として、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いた生体遺伝子導入系の有効性について検討する。これを用いて、種々のシグナル分子の機能解析を行う。また、肝臓での炎症反応・線維化を経て肝がんを発症する非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)病態モデルを用いた解析を進める。
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