燃料電池研究開発分野において、燃料電池デバイスの普及促進のために、白金電極使用量を、現状の1/10以下に削減したうえで、市販の白金電極触媒の性能を大きく超える電極触媒材料の開発を目指した研究を推進することが強く望まれている。Bretislav Smid博士と受け入れ研究者である森は、白金電極触媒とセリアナノワイヤとの界面構造を精密に解析し、そのうえで、白金-セリアナノワイヤ電極を作製することで、燃料電池内における白金量(現在は、総電極材料に占める白金量は50wt%程度)を、1/10である5wt%にしても、高い性能を有する新規省白金電極の開発を行うことを目的とした。平成27年度は、前年度の研究成果を踏まえ、白金担持量大幅低減に必要な界面構造を明らかにするために、電気化学データと光電子分光により得られた電極触媒表面組成分析結果の相関性を検討した。 これまでの森グループの研究では、主としてPt4fスペクトルやCe3dスペクトルの変化に注目した研究が主であったが、今回は、酸素1sスペクトルのなかに含まれるPtとCeOx間の強い相互作用を裏づけるピークを探すことと、その電極性能の間の関係に注目して検討をすすめた。 その結果、セリウム酸化物格子からの酸素である、C=O及びC-O由来の酸素ピークの分離に成功し、あわせて、これらのピークが、Pt担持セリアナノワイヤ電極触媒の電気化学的前処理により明瞭になることを明らかにした。 電極性能が最も高い電極から、上述の特徴的なO1s中におけるセリウム酸化物格子からの酸素ピークが明瞭に観察されたことから、微少量白金とセリアナノワイヤ担体間相互作用を最大にするうえで必要な界面構造は、電極作製工程のひとつである、電気化学的前処理工程において形成されることが明らかになった。
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