研究課題
PM2.5に代表される大気降下物には、窒素やリンのような湖沼生態系に大きな影響を及ぼす栄養塩が含まれている。こうした大気降下物の近年の増加に伴って、山岳湖沼生態系がどのように変化してきたのか、その長期記録を明らかにしてどのような湖が特に脆弱であるのかを調べたい。特に、日本の淡水湖沼珪藻群集に影響を及ぼす要因を考えることは、その湖の脆弱性の主要な要因がどの環境要因であるかを特定する上で有用な情報を提供してくれる。現在注目している湖は、集水域に森林を持つ湖沼と湿地を持つ湖沼である。湿地は、腐植酸による栄養塩吸着や植生による栄養塩吸収によって湖への栄養塩負荷を軽減させる可能性がある。一方で森林は、湿地よりも大気からの栄養塩の降下量を促進しやすく、湖への栄養塩流入も比較的速いことが予想される。そこで、栄養塩負荷に対する集水域タイプの違いによって、湖の栄養塩濃度の変化の違いがある可能性がある。平成25年度は、九州の森林と湿地に囲まれた山岳湖沼である立石池と小田の池を対象に湖沼堆積物を採取する予定であった。しかし、湖の地主の許可や環境省への申請手続きに大幅に時間がかかったこと、冬季の調査では薄い氷が張っているおそれがあり採泥調査が困難であったため、採泥調査を平成26年5月に延期せざるを得なかった。5月2日~5月5日に両湖沼の堆積物を採取した。20cmを超える堆積物コアを採取することができた。今後は各湖沼について、年代測定、湖底堆積物の珪藻分析により、湖の栄養塩環境を示唆する珪藻群集の変遷を復元する。湿地堆積物の珪藻分析により、湿地の珪藻群集の変遷を明らかにすることで、湿地で栄養塩が吸収され湖沼への負荷が軽減されているのかを検討する。
3: やや遅れている
採泥調査が予定よりも遅れているが、これから分析を進めていく上で良い環境が整っている。年代測定と珪藻分析を同時並行で行うことで、遅れを取り戻すことはできると考えている。
今後、湖沼堆積物コアの珪藻分析を行う予定である。Pb-210法による年代測定、栄養塩、クロロフィル分析、全窒素全有機炭素分析を行っていく。
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Science of the Total Environmen
巻: 442 ページ: 189-197