研究目標である水素原子により終端されたダイヤモンド表面の電子親和力(NEA)を利用した高効率電子放出源の大面積化に向けた多結晶n型半導体ダイヤモンド薄膜形成に対して、研究実施計画に従い平成27年度においては以下の研究成果を得た。多結晶n型ダイヤモンド薄膜成長装置のマイクロ波プラズマ安定性に関して、主に基板ホルダー周辺の改造を行い、12mm径のモリブデン基板ホルダーにおいて表面に均一に分布するプラズマ形成が確認できた。ホール効果による半導体特性評価に必要な自立膜形成のために、平均粒径5nmの超微結晶ダイヤモンド粒子を用いてシリコン基板表面に種付け処理を行い、その表面に多結晶ナノダイヤモンド薄膜を形成し、シリコン基板を一部溶液エッチングで除去することでダイヤモンドメンブレンを形成した。これによりpn接合ダイヤモンド電子源の電子注入電極を直接n型ダイヤモンドに形成する事が可能となり、さらなる抵抗損失の低減となる。得られたメンブレンには一部にシワが寄った表面形態が観測され、基板との応力により形成されたものと考えられる。また、これは圧力センサーとしての応用にもつながると考えている。Leidenfrost効果に関しては、その泳動過程の動力学をアセトンと水を用いた系で実験的に検証した。さらにホスト液体と液滴間で反応熱を伴う系を作り、そこでの泳動の駆動力形成を議論する論文も同時に執筆し、投稿し現在査読を受けている。
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