本研究の目的は,証明論,モデル理論,逆数学など現代数理論理学のいくつかの分野を融合して,証明不可能性の相転移現象を分析することにある.この現象の研究は主に1階算術に対してPelupessyの師であるWeiermannによって創始されたが,本研究ではさらに幅広い数学を扱う2階算術の諸体系を考慮しながらこの分析法を発展させた.Pelupessyはまず来日以前から取り組んでいた2編の論文を完成させて受理された.さらに,もう一編過去の研究の延長でMaclaganの定理の弱い形に対する相転移に関する論文も受理されている.新機軸として本年度は2つのプレプリントがある.一つは,GasparとKohlenbach両教授が定式化した有限的Ramseyの定理FRTと本来のRamseyの定理RTとの関係を調べたもので,パラメータを入れた両者の命題について詳細な探査を行なった.パラメータの種類を様々に設定することで,予想外に多くの強弱関係が出現している.最後は,研究室院生との共同研究で,小Dicksonの補題 と 弱Paris= Harrington原理を比較するものである.ここで,弱Paris= Harrington原理とは,ペアに関するRamseyの定理の一種で,列に対する隣同士の関係が同色になるような均質集合の存在を主張する者である.ここでも意外な同値関係を示すと共に,この場合のRamsey数を具体的に求めることにも成功した.これらの結果の一部はプレプリントとして公開されている.
|