研究課題/領域番号 |
13F03792
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
舟橋 良次 独立行政法人産業技術総合研究所, ユビキタスエネルギー研究部門, 上級主任研究員 (60344107)
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研究分担者 |
BARBIER Tristan 独立行政法人産業技術総合研究所, ユビキタスエネルギー研究部門, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 熱電材料 / 層状構造 / インターカレーション |
研究実績の概要 |
層状ホモロガス酸化物である(BaCoO3)n(BaCo8O11)は一次元鎖を有するBaCoO3と二次元構造を有するBaCo8O11が交互にc軸方向に積層した構造を有し、n値によりBaCoO3鎖がc軸方向に伸びていく。 BaCo8O11 (n=0)、Ba2Co9O14 (n=1)、Ba3Co10O17 (n=2)、Ba4Co11O20 (n=3)及びBaCoO3 (n=∞)の多結晶体試料を固相反応法により作製した。全ての試料で電気抵抗率は温度上昇共に低下した。またn=1~3の試料ではnの値の増加に伴い、BaCoO3の数値に近づく傾向があった。ゼーベック係数の数値から全試料がp型であることが分かった。BaCoO3を除きゼーベック係数は温度上昇と共に低下したことから、n=0~3はフェルミ順位付近にギャップを有するバンド半導体と考えられる。 熱伝導率はn値が大きくなるほど低減した。これはBaCoO3一次元鎖がBaCo8O11面よりも低い熱伝導率を有するためである。ZTの値はBa2Co9O14 (n=1)で最も高くなった。 Ba2Co9O14のBaを5%元素置換したBa1.9M0.1Co9O14 (M: Sr,Ca,Na,La,Dy,Er,Yb,Bi)の電気抵抗率は定性的には200℃と300℃辺りに変曲点を持つ、温度上昇と共に電気抵抗率が減少する曲線となったが、Dy、Er、Ybで300~400℃より高温では温度上昇に従い電気抵抗率が増加する金属的な挙動が観察された。ゼーベック係数は全ての試料で温度上昇と共に減少した。Yb置換において最も高い出力因子が得られた。Yb置換量を変えた研究の結果、Ba1.9Yb0.1Co9O14で500℃において0.1のZTを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酸化物においてはBa-Co-O及びBa-Co-Cl(Br)-Oのホモロガス物質について詳細な構造解析とその特性の関係が明らかになりつつある。まだ実用域には達していないものの、このホモロガス物質では最高で0.1のZTを得ており、この物質を母物質として、新たな機能物質を開発できる可能性が見えてきた。また、シリサイド材料においても、これまで研究してきたMn3Si4Al2に非常に近い組成で、異なる結晶構造を有する合金相を見出すことができた。今年度、この物質の熱電特性を評価することで、新たな機能性層状構造材料の開発に期待が持てると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、多数の試料合成により、高い機能を有する層状構造物質の探索を行う。そのため構造解析や熱電性能など多くの測定、解析が必要となる。既に東北大学、北海道大学、大阪府立大学、フランスのCRISMATとの研究連携を行っているが、さらに関係を深め、効率的に研究を進め、限られた時間内で成果を上げられるようにしたいと考えている。
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