研究課題/領域番号 |
13F03904
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
川勝 英樹 東京大学, 生産技術研究所, 教授
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研究分担者 |
DAMIRON Denis 東京大学, 生産技術研究所, 外国人特別研究員
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キーワード | 原子間力顕微鏡 / フォーススペクストロスコピー / 元素同定 / カラーAFM |
研究概要 |
光学系の見直しを行うとともに、試料の準備方法について検討を行った。 シリコンの良好な原子分解能撮像を提案した手法で実証するために、シリコンの試料準備方法に付いて検討を加え、加熱温度や排ガスの状況について調べた。その結果、従来の装置と比較して、ポンプの能力が低く、デガス、酸化膜の除去を従来の装置と同程度のレベルで実施できていないことを見いだした。現在、試料準備室のコンビネーションポンプの能力を400リットルから1600リットルに増やし、実験を行っている。 AFMヘッドの各種機構に付いても見直しを行い、安定した探針のアプローチが可能となっている。提案の手法のより好ましい作動条件を見いだすべく、探針を近接力の作用範囲に入れた状態で、カンチレバー振幅、試料台位置変調振幅、各種変調周波数を変化させ、その影響を調べている。その結果、フリースタンディングのカンチレバーの振幅対周波数ノイズの関係、カンチレバー振幅と周波数シフトカーブの関係、カンチレバー振幅と極小自励周波数の関係、周波数の極小値においてスナップインを起こさない最低カンチレバー振幅、良好なSN比が得られるカンチレバー振幅等についての傾向や、最適値を求めることが可能になった。 シリコンや不純物を含んだシリコンの撮像に加えて、提案する手法の有効性を示す一例として、同研究所の枝川圭一教授の協力を得て準結晶の観察を試みている。現在、各種試料準備方法を試み、準結晶のSTM観察、準結晶の従来方法に依るAFM観察を行っている。まだ原子分解能の像や、提案した手法に依る撮像に成功していない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
微小な10pmオーダのカンチレバー振幅や、試料位置変調に依る周波数シフトカーブやノイズカーブの取得が安定して取得可能となっており、提案の手法の有効性を良好な像の取得を通じて実証することがここ数ヶ月で可能になると考えられる。準結晶の原子分解能撮像を通じて、提案手法の有効性を示すことを予定している。ただし、準結晶は試料準備の方法や条件によって表面の状態が変化したり、スパッタの条件によっては特定の原子が優先的に抜けてしまったりと、どの程度純粋に試料の"ありのままの"状態を可視化できるか試行例を積み重ねる必要があると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
別の装置で、数年前に世界的に見ても極めて良好な原子分解能像を取得した装置が現有装置としてある。この装置では、世界に先駆けて10pmオーダの振幅でシリコン(111)7x7表面のアダトムの撮像に成功している。他に、5MHzでの原子分解能撮像、ラテラル振動による原子分解能像の取得に成功している。現在構築中の装置と平行して、この装置に提案の手法を適応するための変更を加えることを計画している。現在、透過電子顕微鏡内でも良好なフォースカーブの取得が可能となっており、電子線照射の影響が、探針試料間距離がサプオングストロームの領域でも評価可能となってきている。今後、TEM内での力学的原子種や状態の同定を可能とする。
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